・第1族元素(アルカリ金属など)


(1)1族元素

 周期表において、第1族に属する水素H, リチウムLi, ナトリウムNa, カリウムK, ルビジウムRb, セシウムCsなどの元素を総称して、第1族元素といいます。このうち、水素Hを除いた元素を、アルカリ金属(alkali metals)といいます。第1族元素の電子構造の特徴は、最外殻が1個の電子に占められたns軌道(n=1,2,3・・・)からなることです。ここで、nは主量子数と呼ばれる値で、電子殻の大きさに対応しています。

なお、第1族元素において、水素の単体H2だけが、常温常圧では気体ですが、25万気圧以上の超高圧下では、水素原子は電子を保持できなくなり、金属化することが知られています。金属水素(metallic hydrogen)では、電子が原子核に束縛されずに、金属における自由電子のように振る舞います。木星は厚さ2kmの液体水素で覆われており、その海底は300万気圧以上もの超高圧であり、木星の海底は、金属水素で満たされていると考えられています。

 

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.1  木星には金属水素が存在すると考えられている(画像はこちらからお借りしました)

 

 アルカリ金属の単体は、化合物を熱して得られる融解液を溶融塩電解することで得られ、空気中の酸素O2や水H2Oと反応するので、それらを避けるために、灯油中に保存されます。灯油を拭って放置すると、自然発火することもあるので、取り扱いには十分注意する必要があります。アルカリ金属は、どれも密度の小さい銀白色の軽金属であり、比較的軟らかく、融点も低いです。また、各元素に特有の炎色反応を示します。次の表.1に、アルカリ金属の単体の性質を示します。

 

.1  アルカリ金属の単体の性質

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アルカリ金属の融点が低いのは、アルカリ金属の原子半径が大きく、金属結合に関与する自由電子が1個しかないからです。すなわち、アルカリ金属は同周期の元素と比べて原子半径が大きく、原子半径が大きいほど単位面積当たりの自由電子の数が少なくなるので、結果的に金属結合が弱くなって、融点が低くなるのです。これは、同族のアルカリ金属同士にも適用することができ、アルカリ金属では、原子番号の大きい元素ほど原子半径が大きくなるので、融点は低くなります。

また、アルカリ金属の単体は反応性に富み、原子番号の大きい元素ほど金属結合が弱くなって、結晶エネルギーが低減するので、原子番号の大きい元素ほど激しく反応する傾向が見られます。アルカリ金属は還元性が強く、室温では酸素O2や塩素Cl2と直ちに化合します。そのため、空気中では速やかに酸化されて金属光沢を失います。また、冷水とも激しく反応して水素H2を発生し、水酸化物を生じます。例として、次にナトリウムNaの反応を示します。

 

4Na + O2 → 2Na2O

2Na + Cl2 → 2NaCl

2Na + 2H2O → 2NaOH + H2

 

(2)水素

周期表の第1番目に位置する水素(hydrogen)は、宇宙においてその存在割合が最も大きい元素です。水素はビッグバン後に宇宙で最初にできた元素であり、その後、恒星中の核融合反応により、ヘリウムから鉄までの元素ができ、さらに超新星の爆発により、鉄より重い元素ができたと考えられています。

水素の単体は二原子分子H2からなり、室温では無色無臭の気体で、同温同圧では、すべての気体の中で最も密度が小さいです。気体分子の速さは、気体のモル質量の平方根に反比例するため、水素分子H2は、非常に速く熱運動をすることになり、その速度は、第二宇宙速度(地球の重力圏を振り切るのに必要な速度)を優に超えるため、水素分子H2は大気中で生成しても、すぐに宇宙に拡散してしまいます。現在、地球からは1秒当たりで、水素H23 kg宇宙へ拡散しているといわれています。これがこのまま続くと、30億年後には、地球の水分はほとんどなくなっていると考えられています。

水素原子は、1個の陽子からなる原子核と、その周囲を運動する1個の電子とから構成され、1個の電子は、基底状態で1s軌道を占めます。この観点からすれば、最外殻としてns軌道に1個の電子を持つアルカリ金属原子とよく似ており、実際に水素では、+1のイオン価の状態が安定に存在します。ただし、水素イオンH+ は、アルカリ金属を含む他の元素のイオンとは大きく異なり、電子が存在せずに、陽子がむき出しの状態です。化学が対象とする場において、陽子が単独で存在することはまれであり、例えば水溶液中では、水素イオンH+ は水H2Oと結合して、オキソニウムイオンH3O+ の形で存在します。一方で、水素の1s軌道はさらに1個の電子を受け入れて、満たされた最外殻軌道として安定化します。このため、水素はハロゲンと同様の-1のイオン価を取り、水素化物イオンH- としても存在します。このように水素は、アルカリ金属やハロゲンと似たような性質を示すものの、このことは逆に水素の特異性を表しているのであって、水素をアルカリ金属やハロゲンと同族と考えることは、むしろ誤りです。

 

H+ + H2O → H3O+

 

 水素の原子核として、陽子1個からなるものの他、1個の陽子と1個の中性子から構成されるもの(質量数2)、および1個の陽子と2個の中性子から構成されるもの(質量数3)が知られています。前者を重水素またはジュウテリウム(deuterium)、後者を三重水素またはトリチウム(tritium)と呼び、それぞれをD(あるいは2H), T(あるいは3H)の化学記号で表します。質量数が1の水素1Hを、軽水素またはプロチウム(protium)と呼ぶこともあります。自然界におけるこれらの存在比は、1H99.985%D0.015%T10-17%程度です。また、これらの同位体は、互いの質量が2倍ないし3倍と大きく異なります。これはもちろん、水素の原子核を構成する陽子と中性子の数が極端に少ないからであり、この結果、水素では同位体効果が他の元素と比べて非常に大きくなります。この性質を利用して、重水素Dや三重水素Tは、水素が関与する化学反応の追跡などのためのトレーサー(tracer)として用いられます。

 

.2  水素Hの同位体

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また、太陽が光るのは、太陽の中心部で大量の1H核が核融合反応(nuclear fusion)して、4He核になっているからです。太陽だけでも、毎秒6t1H核を消費して、毎秒59,600t4He核を生産しています。ところで、反応で消費した1H核と生成した4He核の質量差400tは、どこへ行ったのでしょうか?その答えは、アインシュタインの有名なE=mc2の関係式に従って、エネルギーに変換されたのです。つまり、質量mがエネルギーEに変換されたとすると、そのエネルギー量は、質量mと光の速さc2乗の積という、膨大な値になるのです。太陽からは、毎秒400tのうち、毎秒1.6 kg分が地球にやってきて、夜明けの薄明かりや夏の午後の日差し、黄昏の空の色を生み出しています。たった毎秒1.6 kgの質量でも、地球を照らす膨大なエネルギー量になるのは、光の速さcが、30km/sという膨大な値だからです。

 

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.2  夕焼けは太陽の核融合反応が生み出している

 

水素H2は、実験室的には、亜鉛ZnやアルミニウムAlなどの金属と、塩酸HClあるいは希硫酸H2SO4を反応させて、発生させることができます。水素ガスは水に溶けにくいので、水上置換で捕集します。例えば、亜鉛Znと塩酸HClとの反応は、次のようになります。

 

Zn + 2HCl → ZnCl2 + H2

 

工業的には、水性ガスの反応、石油や天然ガスの変成、水H2Oの電気分解などで製造されています。水性ガスとは、例えば、コークスと水蒸気を1,000℃以上の高温で反応させて得られる気体のことで、式(I)の反応で生成する一酸化炭素COと水素H2を主成分とした混合気体であり、さらに、式(II)の反応で生じる水素H2を分離して利用します。式(II)の反応は、酸化鉄(III) Fe2O3などの存在下で、450℃ほどの高温で進行します。

 

C + H2O (高温) CO + H2 ・・・(I)

CO + H2 + H2O (酸化鉄) CO2 + 2H2 ・・・(II)

 

また、天然ガスなどに含まれる炭化水素の変成では、次に示すような反応が利用されます。この反応は、水蒸気改質(steam reforming)といいます。また、この反応もニッケルNiなどを触媒として、高温で進行します。

 

CH4 + H2O (ニッケル) CO + 3H2

 

水素H2は、常温ではフッ素F2以外の単体とは反応しませんが、光の照射下では、塩素Cl2と激しく反応します。また、電気花火があれば、酸素O2とも爆発的に反応します。さらに、高温高圧下で触媒があれば、窒素N2とも反応して、アンモニアNH3を生成します。触媒には、四酸化三鉄Fe3O4を主成分とする物質が用いられ、反応式は次のようになります。この反応は、工業的にアンモニアNH3を合成する、ハーバー・ボッシュ法として知られます。

 

N2 + 3H2 (鉄触媒) 2NH3

 

 さらに、水素H2は、無公害のエネルギー源としても注目されています。燃料電池はその1つです。ここでは、水H2Oの電気分解の逆反応が起こり、この化学反応におけるエネルギー変化が、直接電気エネルギーに変換されるので、非常に効率的です。

 

2H2 + O2 → 2H2O

 

また、構造中に水素を含む化合物は、数多く存在します。水素化物のうち、イオン価が+1である水素を含む化合物は、枚挙に暇がありません。塩酸HCl硫酸H2SO4硝酸HNO3などでは、水素よりも電気陰性度の大きな原子との結合が存在するため、水素原子の1s電子は、結合を形成する相手の原子に引き付けられており、水素は水素イオンH+ に近い形で存在しています。実際、これらの酸が水に溶解すると、水素イオンH+ が放出されます。ただし、化合物中で、水素原子は完全にイオン化して、イオン結合を形成する訳ではありません。例えば、塩酸HClにおいて、水素Hと塩素Clの間には、ある割合で共有結合が働いています。

一方で、水素よりも電気陰性度の小さい原子との結合では、水素は水素化物イオンH- として振る舞います。この例は、水素化リチウムLiH水素化ナトリウムNaH水素化カリウムKH水素化カルシウムCaH2などのような、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水素化物に見ることができます。これらの水素化物は、水H2Oと激しく反応して、水素H2を発生させます。例えば、水素化ナトリウムNaHの反応は、次のように進行します。

 

NaH + H2O → NaOH + H2

 

この性質を利用して、水素化ナトリウムNaHなどは、溶媒に存在する不純物の水H2Oを取り除くための乾燥剤として用いられたり、有機合成において強塩基として用いられたりします。次の表.3に、代表的な水素化物を示します。

 

.3  代表的な水素化物

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(3)リチウム

アルカリ金属元素のうち、リチウム(lithium)には、他の元素にはない特異な性質が見られます。これは、主にリチウムLiの原子半径およびイオン半径が、他のアルカリ金属と比べて、非常に小さいことに起因します。それ故、リチウムLiの化学的性質は、他のアルカリ金属元素よりも、むしろアルカリ土類金属に類似しています。リチウムLiの単体は、常温常圧で銀白色の金属固体として存在します。リチウムLiは、非常に軟らかく軽い金属で、水に浮きます。水に浮く金属は、他にナトリウムNaとカリウムKだけです。水面のリチウムLiは、水H2Oと反応して、比較的穏やかに(爆発はせずに)水素ガスを発生させます。

 

2Li + 2H2O → 2LiOH + H2

 

リチウムLiは、身近な消費財に広く使われています。リチウムイオン電池の中のリチウム金属は、心臓ペースメーカーや自動車、ノートパソコンまで、多種多様な電子機器の電源として働いています。リチウムイオン電池は、比較的軽いのにパワーがありますが、それを可能としている理由の1つは、リチウムLiの密度の低さです。また、自動車やトラックや機械類に使われるリチウムグリースは、ステアリン酸リチウムを含んでいます。

リチウムLiは、地球上に広く分布していますが、非常に高い反応性のため、単体としては存在していません。地殻中では、25番目に多く存在する元素であり、火成岩や塩湖かん水中に多く含まれます。しかし、リチウムLiの埋蔵量の多くは、アンデス山脈沿いに偏在しており、ボリビアのウユニ塩湖は、世界最大のリチウム埋蔵量であると推定されています。リチウムイオン電池を使う電気自動車が普及する日が来たら、私たちはボリビアから目が離せなくなるでしょう。

 

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.3  世界最大のリチウム埋蔵量を有すると想定されているボリビアのウユニ塩湖

 

 また、炭酸リチウムLi2CO3は、リーマスという躁鬱病の治療薬として使用されます。厳密な理由は未解明ですが、リチウムイオンLi+ が、神経細胞の神経伝達物質受容体に作用し、ノルアドレナリンの放出を抑制し、セロトニンの合成を促進するからだといわれています。

 

(4)ナトリウム

ナトリウム(sodium)は、銀白色の軽い金属で、反応性が非常に高いです。ナトリウムNaを水中に投げ込むと、急激に水素ガスが発生し、数秒後には、その水素ガスが発火して大爆発が起こり、燃えるナトリウム片が四方八方に飛び散ります。このような映像は、世界中の動画サイトにアップロードされており、ナトリウムNaは、世界中の悪戯好きに好まれる金属でもあります。しかし、ナトリウムNaを扱う実験は、危険が伴う上に後処理も難しいため、くれぐれも真似はしないようにして下さい。

 

2Na + 2H2O → 2NaOH + H2

 

 ナトリウムNaは、生体にとって重要な電解質の1つでもあり、ヒトでは、その大部分が細胞外液に分布しています。神経細胞や心筋細胞などの電気的興奮性細胞の興奮には、細胞内外のナトリウムイオンNa+ の濃度差が不可欠です。そのため、ヒトはナトリウムNa不足にならないように、塩化ナトリウムNaClを塩味として感知できるようになっています。アルカリ金属の塩化物としては、他のアルカリ金属も比較的似たような味がするものの、塩化ナトリウムNaClが一番おいしいです。減塩食用として、よく塩化カリウムKClが使用されますが、塩化ナトリウムNaClと比べて、苦味があってあまりおいしくはありません。塩化ルビジウムRbClと塩化セシウムCsClは、塩味が薄くて金属味が強く、塩化リチウムLiClは、舌が焼けるような感じのあとに、油っぽい金属味が口に残ります。ちなみに、塩化ナトリウムNaClの半数致死量LD50値は3.5 g/kgであり、これは、体重60 kgのヒトが210 gの塩化ナトリウムNaClを一度に摂取すると、半数が死に至るという意味です。塩化ナトリウムNaClの過剰摂取は、身体によくありません。

 純粋なナトリウム金属は、化学工業で還元剤として大量に使われます。また、熱伝導率が良く、高温でも液体で存在するため、ナトリウム金属は、高速増殖炉の冷却材として用いられます。最も身近な例としては、黄色っぽいナトリウムランプがあります。高速道路のトンネルの黄色っぽい光は、ナトリウムランプによるものです。単位電力当たりの発光効率がどんなランプよりも優れているのですが、これに照らされると、色の判別が付きにくくなるのが欠点です。

 

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.4  トンネル内に設置されたナトリウムランプ

 

 水酸化ナトリウムNaOHは、苛性ソーダとも呼ばれ、強塩基として一般的に広く用いられ、化学工業的に非常に重要な基礎原料の1つです。工業的には、塩化ナトリウムNaCl水溶液の電気分解で製造されます(無機工業化学を参照)

水酸化ナトリウムNaOHは、常温では無色半透明の固体で、潮解性(deliquescence)が強く、空気中に放置すると、徐々に吸湿して溶液状になります。実験室的には、強塩基として用いる他、潮解性を利用して、乾燥剤としての用途もあります。なお、強塩基は、タンパク質のペプチド結合を加水分解するので、タンパク質を腐食する作用を持ちます。したがって、水酸化ナトリウムNaOHが皮膚などに付着したまま放置すると、火傷のような症状を起こすので、付着した場合は、即座に流水で洗い流します。また、ナトリウム金属を素手で触れると、手の水分と反応して、水酸化ナトリウムNaOHを生じるので、大変危険です。

 

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.5  水酸化ナトリウムNaOHの潮解性

 

 炭酸ナトリウムNa2CO3は、炭酸ソーダとも呼ばれる白色固体です。水によく溶け、水溶液は加水分解により、塩基性を示します。炭酸ナトリウムNa2CO3は、水酸化ナトリウムNaOHに二酸化炭素CO2を反応させるか、炭酸水素ナトリウムNaHCO3を加熱すると得られます。また、工業的には、炭酸ナトリウムNa2CO3は、塩化ナトリウムNaClと炭酸カルシウムCaCO3から、アンモニアソーダ法により製造されます(無機工業化学を参照)

 

CO32- + H2O HCO3- + OH-

2NaOH + CO2 → Na2CO3 + H2O

2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O

2NaCl + CaCO3 (アンモニアソーダ法) CaCl2 + Na2CO3

 

炭酸ナトリウムNa2CO3水溶液を濃縮すると、無色の十水和物Na2CO310H2Oの結晶が析出します。このように、結晶中にある一定の割合で結合している水分子を、水和水といいます。この結晶は、空気中で放置すると、水和水の大部分を失って、粉末状の一水和物Na2CO3H2Oになります。このように、結晶が自然に水和水を失う現象を、風解(efflorescence)といいます。炭酸ナトリウムNa2CO3は、ガラスやセッケンの製造原料として用いられる他、和紙や染料や医療工業品でも利用されています。

 

Na2CO310H2O → Na2CO3H2O + 9H2O

 

炭酸水素ナトリウムNaHCO3は、重曹や重炭酸ソーダと呼ばれる白色粉末です。名前に「重」と付くのは、炭酸ナトリウム十水和物Na2CO310H2Oよりも比重が大きいからです。水への溶解度は、炭酸ナトリウムほど大きくはなく、水に少し溶けて、加水分解により塩基性を示します。炭酸水素ナトリウムNaHCO3は、濃度にもよりますが、フェノールフタレインを加えても変色しない程度の弱い塩基性です。また、炭酸水素ナトリウムNaHCO3は、加熱したり強酸を加えたりすると、二酸化炭素CO2を発生します。炭酸水素ナトリウムNaHCO3は、ベーキングパウダーや入浴剤として使われる他、医薬品として主に内服用胃腸薬にも利用されています。

なお、炭酸飲料のことを「ソーダ」とか「ソーダ水」ということがありますが、これには炭酸水素ナトリウムNaHCO3が関係しています。炭酸水素ナトリウムNaHCO3の別名は「重炭酸ソーダ」であり、炭酸水を作るのに、炭酸水素ナトリウムNaHCO3を使っていたことの名残です。昔は、炭酸水素ナトリウムNaHCO3にレモンの酸性成分であるクエン酸を反応させることで、二酸化炭素CO2を発生させていたのです。「重炭酸ソーダ」を溶かして作ったので、炭酸水は「ソーダ」と名付けられ、それに味付けをした炭酸飲料も、同じ名前になったという訳です。

 

HCO3- + H2O H2CO3 + OH-

2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O

NaHCO3 + HClNaCl + CO2 + H2O

 

(5)カリウム

 アルカリ金属の反応性は、原子番号が大きくなるほど高くなるため、カリウム(Potassium)は、リチウムLiやナトリウムNaよりも反応性が高いです。カリウムKは、電子を1個失ってカリウムイオンK+ になりやすく、自然界では、その形でのみ存在します。

工業原料としてのカリウム資源は、ほぼ塩化カリウムKClの形で採取されます。カリウムKは、植物の成長に必須であるため、塩化カリウムKCl90%以上は、そのまま、もしくは硫酸カリウムK2SO4の形で、肥料として用いられます。残りは各種の加工を経て、別の化合物として、食物添加物や火薬など、様々な用途に使用されます。また、カリウムKは、人体にとって不可欠の電解質であり、脳および神経などにおけるニューロンの情報伝達に、ナトリウムNaと並んで重要な役割を果たしています。

 質量数4040Kは放射性同位体であり、天然カリウムの0.0117%は、この40Kです。地球上のほとんどの物質は、放射性物質を含んでおり、私たちは、日常的に放射線による内部被曝を受けていますが、そのうちかなりの割合が、この微量に存在する40Kによるものなのです。40Kの半減期は、およそ12.8億年であり、40Kの放射線量は、地球誕生以来何十億年もかけて、徐々に減ってきました。

アメリカの生化学者であるアシモフは、ある時点での放射能レベルが、知的生命体の発展へと扉を開く鍵になったのではないかと考えています。初期の地球では、40Kが多すぎて、傷付きやすい長いゲノムは形成されず、長い年月が経って、40Kが減ってくると、徐々に突然変異の出現確率が低くなり、最終的には高度な知的生命体に落ち着くというのが彼の説です。もちろん、これは純粋な理論上の考察ですが、放射線による大きな突然変異がなければ、今の人類は存在しなかったという考え方は、非常に興味深いですね。

 

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.6  バナナはカリウムKを豊富に含み、放射能がわずかに強い


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・参考文献

1) 齊藤烈/藤嶋昭/山本隆一/19名「化学」啓林館(2012年発行)

2) セオドア・グレイ「世界で一番美しい元素図巻」創元社(2011年発行)

3) 平尾一之/田中勝久/中平敦「無機化学」東京化学同人(2013年発行)