・ルミノールの合成と化学発光


【目次】

(1) 実験操作

(2)

(3) 結果


(1) 実験操作

@ 大型試験管に3-ニトロフタル酸1.0 g8wt%ヒドラジン水溶液2.0 mLを加え、さらに溶媒としてトリエチレングリコール3 mLを加える。

A 試験管をアスピレーターで吸引しながら、下から小さな炎でゆっくりと加熱する。加熱とともに、淡黄色だった溶液は赤褐色になる。

B 試験管を約100まで放冷して、水20 mLを加える。析出結晶を吸引ろ取し、溶媒を除いて試験管に戻す。

C 試験管に5wt%水酸化ナトリウム15 mLを加え、暗赤色の溶液にする。

D 試験管に亜ジチオン酸ナトリウム6.0 gを加えてよく振る。溶液は赤褐色になり、このとき発熱する。

E 少量の水で試験管の周りについた固体を洗い落とし、沸騰しないように注意しながら、3分ほど試験管を振りながら加熱する。

F 熱いうちに酢酸2.0 mLを加え、しばらく放冷する。結晶が析出したら、水浴で冷却して、沈殿を吸引ろ取する。

G 結晶は水で洗浄し、乾燥させると、0.35 gほどのルミノールが得られる。

H ルミノール0.20 gをフラスコ内で10wt%水酸化ナトリウム10 mLに溶かし、さらに200 mLの水を加える。

I 別のフラスコに3wt%ヘキサシアノ鉄(III)カリウム溶液10 mL3wt%過酸化水素溶液10 mL、水80 mLを加えてよく混ぜる。

J 暗室でIの溶液をHに加えると、ルミノールの青白い化学発光を見ることができる。

 

(2) 理論

ヒドラジンH2N-NH2は、強い求核性を持つため、3-ニトロフタル酸のカルボニル基(-CO-)へ求核攻撃をします。この反応は、2分子の水H2Oが脱離する「求核的アシル置換反応」です。反応が終わると、脱水・環化した5-ニトロフタルヒドラジドが得られます。続いて、この5-ニトロフタルヒドラジドの水酸化ナトリウム水溶液に、還元剤として亜ジチオン酸ナトリウムNa2S2O4を加えて加熱し、酢CH3COOHで中和すると、ニトロ基(-NO2)がアミノ基(-NH2)へと還元されたルミノールを得ることができます。

 

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.1  ルミノール合成までの反応機構

 

得られたルミノールに水酸化ナトリウムNaOH加え、鉄(III)イオンFe3+ を触媒として、過酸化水素H2O2を反応させると、過酸化中間体を経て、フタル酸ジアニオンが得られます。過酸化中間体がフタル酸ジアニオンになるときに、460 nmの青白い発光を見ることができるのです。この発光反応を、「ルミノール反応(luminol reaction)といいます。

 

a.png

.2  化学発光の反応機構

 

(3) 結果

 ルミノールの収率は、反応させた3ニトロフタル酸が4.7 mmol得られたルミノールが2.0 mmolだったので、次のようになります。

 

 

上手くやれば、もう少し良い収率になるかもしれません。また、ルミノール反応は、血液が発光反応の触媒になるので、警察の科学捜査において、「血液の鑑識」に古くから用いられることで有名です。しかし、ドラマなどでよくあるように、「ルミノール溶液をスプレーして、ブラックライトで照らす」というような方法をしなくても、暗闇で勝手に光ります。さらに、ルミノール反応は、鉄(III)イオンFe3+ があれば進行する反応なので、人血以外でも光ります。つまり、ルミノール反応は、「血液かどうか」を見極めるだけであって、その血痕がブタやウシでも、「同じ血液です」という結論が出てしまうのです。したがって、ルミノール反応は、科学捜査の中でも簡易的な部類であり、裁判の証拠として使われることは、まずありません。ルミノール反応で「血液」と判明したら、一般的には次に「人血証明試験」が行われ、そこで人血であることが分かって初めて、「血液型鑑定」や「遺伝子捜査」などの科学捜査に回されることになる訳です。

 

ルミノール反応.png

.3  実験室におけるルミノールの化学発光


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