・無機化学(イオンの系統分離)
【目次】
(1) 系統分離
何種類かの陽イオンが含まれている混合物から、各イオンを分離し、イオンを決定することを、「陽イオンの定性分析(cation analysis)」といいます。含まれているイオンが既知で、かつ2、3種類であるときは、たいてい何通りもの分析方法がありえます。しかし、含まれているイオンが未知であったり、既知ではあるが多種類であったりするときは、その分析方法も限られ、それを「系統分析(phyloanalysis)」といいます。複雑な問題では、イオンを分離する操作は、以下の手順で行うことが多いです。
図.1 イオンの系統分離
[操作1] HClを加え、Ag+, Pb2+, Hg22+を沈殿させる。[覚え方:銀(Ag+)の生(Pb2+)ハゲ(Hg22+)]
希塩酸HClを加えると、塩化物イオンCl- によって、沈殿が生じます。ただし、塩化鉛(II) PbCl2の沈殿は、ある程度溶解度が大きいため、一部の鉛(II)イオンPb2+ は、沈殿せずにそのままろ液に混ざることがあります。
Ag+ + Cl- → AgCl↓(白)
Pb2+ + 2Cl- → PbCl2↓(白)
Hg22+ + 2Cl- → Hg2Cl2↓(白)
[操作2] 酸性状態のろ液にH2Sを吹き込み、イオン化傾向がSn2+より小さい金属陽イオンを沈殿させる。
硫化水素H2Sを吹き込むと、硫化物イオンS2- によって、沈殿が生じます。ただし、酸性状態では、金属硫化物の溶解度が大きくなってしまうので、酸性条件では、硫化亜鉛(II) ZnS・硫化鉄(II) FeS・硫化ニッケル(II) NiS・硫化マンガン(II) MnSは、ほとんど溶解してしまいます。よって、操作1で希塩酸HClを加えたあとに、硫化水素H2Sを吹き込むことで、イオン化傾向の小さい金属陽イオン(銅(II)イオンCu2+・カドミウム(II)イオンCd2+・スズ(II)イオンSn2+)だけを、沈殿として分離することができるのです。また、操作1で完全に沈殿しなかった鉛(II)イオンPb2+ が、このとき硫化鉛(II) PbSとして沈殿してくることもあります。
Cu2+ + S2- → CuS↓(黒)
Cd2+ + S2- → CdS↓(黄)
Sn2+ + S2- → SnS↓(褐)
[操作3] NH3+NH4Clの混合溶液を加え、3価の金属陽イオンFe3+, Al3+, Cr3+を水酸化物として沈殿させる。
操作3の前に、ろ液を煮沸して、硝酸HNO3などの酸化剤を加えていますが、これにはきちんとした理由があります。まず、ろ液を煮沸する理由は、ろ液に硫化水素H2Sが溶け込んでいるからです。操作2では、ろ液を硫化水素H2Sの飽和溶液にするので、硫化水素H2Sがかなり溶け込んでいるのです。そこで、ろ液を煮沸することで、溶け込んでいる硫化水素H2Sを追い出すことができます。
また、煮沸したあとに酸化剤を加える理由は、硫化水素H2Sによって還元された鉄(II)イオンFe2+ を酸化して、鉄(III)イオンFe3+ に戻すためです。硫化水素H2Sは、鉄(II)イオンFe2+ より還元力が強いです。そのため、鉄(III)イオンFe3+ がろ液に含まれている場合、硫化水素H2Sによって鉄(III)イオンFe3+ の一部が、鉄(II)イオンFe2+ へと還元されているのです。そこで、硝酸HNO3などの酸化剤を加えてやることで、すべての鉄イオンを鉄(III)イオンFe3+ へと戻すことができます。また、このように鉄(II)イオンFe2+ をわざわざ酸化する理由は、鉄(II)イオンFe2+ より鉄(III)イオンFe3+ の方が、水酸化物イオンOH- と結合して沈殿しやすく、操作で回収しやすくなるからです。
ろ液にNH3+NH4Clの混合溶液を加えると、アンモニアNH3から生じる水酸化物イオンOH- によって、水酸化物の沈殿が生じます。ただし、この混合溶液は緩衝液なので、アンモニアNH3から生じる水酸化物イオンOH- は、塩化アンモニウムNH4Clの電離によって、かなり抑えられています。3価の金属陽イオン鉄(III)イオンFe3+・アルミニウムイオンAl3+・クロム(III)イオンCr3+ の水酸化物は、それだけ溶解度が小さく、沈殿しやすいのです。なお、ここで沈殿する水酸化鉄(III)は、化学式Fe2O3・nH2Oで表されるいくつかの物質の混合物であることが分かっています。具体的には、n=1のFeO(OH)やn=3のFe(OH)3などが知られています。
2Fe3+ + 6OH- + (n−3)H2O → Fe2O3・nH2O↓(赤褐)
Al3+ + 3OH- → Al(OH)3↓(白)
Cr3+ + 3OH- → Cr(OH)3↓(灰緑)
表.1 溶解度積Kspの値(25℃)
|
[Fe3+][OH-]3 |
[Al3+][OH-]3 |
[Cr3+][OH-]3 |
溶解度積Ksp |
7.1×10-40 |
1.1×10-33 |
2.5×10-39 |
このとき、亜鉛(II)イオンZn2+・ニッケル(II)イオンNi2+・コバルト(II)イオンCo2+ は、アンモニアNH3の濃度が大きいので、アンミン錯イオンを作って、沈殿しません。また、緩衝液では、水酸化物イオンOH- の濃度が小さくなっているので、マグネシウムイオンMg2+ やマンガン(II)イオンMn2+ は、水酸化物として沈殿しないようになっています。通常はこのように、マグネシウムイオンMg2+ やマンガン(II)イオンMn2+ が沈殿しないpH=7〜8程度で操作することが多いです。なお、ろ液にマグネシウムイオンMg2+ やマンガン(II)イオンMn2+ がなければ、アンモニアNH3を十分に加えるだけで問題ありません。
[操作4] 塩基性状態のろ液にH2Sを吹き込み、イオン化傾向がZn2+より小さい金属陽イオンを沈殿させる。
硫化水素H2Sを吹き込むと、硫化物イオンS2- によって、沈殿が生じます。なお、塩基性では、硫化物イオンS2- の濃度が大きくなっているので、沈殿が生じやすくなっています。また、硫化水素H2SはアンモニアNH3と中和して、硫化物イオンS2- を生じさせます。そのため、イオン化列で亜鉛(II)イオンZn2+ より小さい金属イオンが、たとえアンミン錯イオンを作っていたとしても、錯イオンを破壊して、硫化物として沈殿します。
Ni2+ + S2- → NiS↓(黒)
Zn2+ + S2- → ZnS↓(白)
Mn2+ + S2- → MnS↓(淡紅)
Co2+ + S2- → CoS↓(黒)
[操作5] ろ液に(NH4)2CO3水溶液を加え、アルカリ土類金属イオンを沈殿させる。
炭酸アンモニウム(NH4)2CO3水溶液を加えると、炭酸イオンCO32- によって、沈殿が生じます。なお、ろ液中の炭酸イオンCO32- 濃度が大きくなりすぎると、マグネシウムイオンMg2+ まで炭酸塩として沈殿してくるので、この操作では、炭酸アンモニウム(NH4)2CO3水溶液を加えすぎないようにします。
Ca2+ + CO32- → CaCO3↓(白)
Sr2+ + CO32- → SrCO3↓(白)
Ba2+ + CO32- → BaCO3↓(白)
このようにして、最後までろ液中に残るのが、アンモニウムイオンNH4+・アルカリ金属イオン(Na+やK+ など)・マグネシウムイオンMg2+ です。イオンの系統分離では、このようにマグネシウムイオンMg2+ が沈殿しないような条件で、操作3や操作5を行なうのが一般的です。アルカリ金属イオンは、炎色反応によって確認することができます。
(2) 沈殿物の再溶解方法
イオンの系統分離では、沈殿を5つのグループに分けましたが、それだけでは、イオンの分離が十分でない場合が多いです。つまり、イオンの分離を完全に行うためには、沈殿物を再溶解させ、さらに沈殿を分析する必要があるのです。以下に、主な沈殿物の再溶解方法を示します。
(i) 塩化銀AgCl
塩化銀AgClは光により、紫〜黒色に変色します。これは、光により自己酸化還元反応が進行し、銀(I)イオンAg+ が銀Agへと還元されるためです。このとき生じた銀Agの微粒子は、入射光を乱反射し、反射光がほとんどなくなるため、黒っぽく見えます。
2AgCl → 2Ag + Cl2
また、塩化銀AgClに、アンモニアNH3, チオ硫酸イオンS2O32-, シアン化物イオンCN- を加えると、これらのイオンが配位子となり、沈殿が錯イオンとなって溶解します。
AgCl + 2NH3 → [Ag(NH3)2]+(無色) + Cl-
AgCl + 2NaS2O3 → Na3[Ag(S2O3)2]+(無色) + NaCl
AgCl + 2CN- → [Ag(CN)2]- (無色) + Cl-
(ii) 塩化鉛(II) PbCl2
塩化鉛(II) PbCl2は、熱湯を注ぐか、あるいは沈殿を含む水溶液を加熱すると、沈殿が溶解します。さらに、これにクロム酸イオンCrO42- を加えると、黄色沈殿が生成します。これにより、鉛(II)イオンPb2+ を確認することができます。
Pb2+ + CrO42- → PbCrO4↓(黄)
(iii) 硫化銅(II) CuS
硫化銅CuSは、濃硝酸HNO3に溶けて、テトラアクア銅(II)イオン[Cu(H2O)4]2+ となります。さらに、これにアンモニアNH3を加えていくと、水酸化銅(II) Cu(OH)2の沈殿が生成し、過剰量加えると、テトラアンミン銅(II)イオン[Cu(NH3)4]2+ となって、沈殿が再溶解します。
[Cu(H2O)4]2+ + 2NH3 → Cu(OH)2↓(青白) + 2H2O + 2NH4+
Cu(OH)2 + 4NH3 → [Cu(NH3)4]2+(深青) + 2OH-
(iv) 水酸化鉄(III) Fe2O3・nH2O
水酸化鉄(III) Fe2O3・nH2Oは、酸を加えると中和されて溶解し、ヘキサアクア鉄(III)イオン[Fe(H2O)6]3+ となります。
Fe2O3・nH2O + 6H+ → 2[Fe(H2O)6]3+(黄褐) + (n−3)H2O
(v) 水酸化アルミニウムAl(OH)3
水酸化アルミニウムAl(OH)3は、酸を加えると中和されて溶解し、ヘキサアクアアルミニウムイオン[Al(H2O)6]3+ となります。また、水酸化アルミニウムAl(OH)3は両性金属なので、水酸化ナトリウムNaOH水溶液にも溶解し、テトラヒドロキシドアルミン酸イオン[Al(OH)4]- となります。
Al(OH)3 + 3H+ + 3H2O → [Al(H2O)6]3+(無色)
Al(OH)3 + OH- → [Al(OH)4]-(無色)
(vi) 硫化亜鉛ZnS
硫化亜鉛ZnSは、希塩酸HClによって溶解し、テトラアクア亜鉛(II)イオン[Zn(H2O)4]2+ となります。また、亜鉛(II)イオンZn2+ は両性金属イオンなので、水酸化ナトリウムNaOH水溶液を少量加えると、水酸化亜鉛Zn(OH)2の沈殿が生成し、さらに過剰量加えると、テトラヒドロキシド亜鉛(II)酸イオン[Zn(OH)4]2- となり、再溶解します。
ZnS + 2H+ + 4H2O → [Zn(H2O)4]2+(無色) + H2S↑
[Zn(H2O)4]2+ + 2OH- → Zn(OH)2↓(白) + 4H2O
Zn(OH)2 + 2OH- → [Zn(OH)4]2-(無色)
(vii) 炭酸カルシウムCaCO3
炭酸カルシウムCaCO3は、希塩酸HClまたは炭酸水H2CO3により溶解します。また、カルシウムイオンCa2+ は、炎色反応で赤橙色を呈します。
CaCO3 + 2H+ → Ca2+ + CO2 + H2O
CaCO3 + CO2 + H2O ⇄ Ca2+ + 2HCO3-
(3) 炎色反応
イオンを含む水溶液を、希塩酸HClで洗った白金線の先に少量付け、ガスバーナーの外炎にかざします。すると、炎に特有の色が付く元素があります。このように、炎の中で各元素特有の色を示す反応のことを、「炎色反応(flame reaction)」といいます。
炎色反応は、気体状の原子が、高温で加熱されることで観察できます。例えば、銅線を加熱するだけでは、銅Cuの沸点は2,562℃なので、原子が蒸発せず、銅Cuの炎色反応は観察されません。しかし、塩素Clとの化合物である塩化銅(II) CuCl2ならば、沸点が993℃と比較的低いので、イオン結晶が熱により解離し、原子化しやすくなります。炎色反応の実験の試料に塩化物が多用されるのは、こういった理由によります。また、炎色反応の実験では、「白金線」を使うことが一般的です。これは、白金Ptが非常に安定でイオン化しにくく、沸点も3,825℃と極めて高いため、他の金属イオンの観察の妨げにならないからです。
図.2 炎色反応を観察する様子
原子は、原子核と電子から構成されます。そして、電子は、電子殻と呼ばれる限られた空間にしか存在していません。つまり、原子全体を見ると、原子には、電子がほとんど存在していない「無の空間」が存在しているのです。このように、電子は内側から電子殻ごとに、とびとびの場所にしか存在しておらず、このような状態を「量子化(quantization)」されているといいます。
原子に外部から熱などのエネルギーを与えると、最外殻にある電子が励起して、より高エネルギーの外側の電子殻に移動する現象が起こります。電子は、原子核とのクーロン力によって安定化しているので、当然、外側の電子殻の方が、不安定で高エネルギーな訳です。したがって、不安定で高エネルギーの励起状態の電子は、熱が下がると、再び元の安定な低エネルギーの電子殻に戻ってきます。この不安定な「励起状態(excited state)」と安定な「基底状態(ground state)」のエネルギー差が、光として放出されます。また、このときのエネルギー差ΔEと光の振動数には、次のような関係があります。
※ h (プランク定数) = 6.6×10-34 J・s
図.3 励起状態と基底状態
このエネルギー差ΔEは、電子殻のエネルギーが量子化されているため、各元素によって決まった値を取ります。つまり、各元素によって、炎色反応で示す色が決まっており、またそれぞれで異なっているのです。可視光では、振動数が大きいと紫色よりに、振動数が小さいと赤色よりになります。したがって、エネルギー差ΔEが大きいほど、紫色よりになります(赤<橙<黄<緑<青<紫の順)。ちなみに、可視光の波長領域は、およそ380 nmから780 nmであり、この範囲でのみ炎色反応が観測できます。その範囲より短いものを「紫外線」、逆に長いものを「赤外線」と呼んでいます(色の科学を参照)。
図.4 代表的な元素の炎色反応
夜空を彩る花火は、夏の風物詩です。花火の色は、実は様々な金属の炎色反応によるものなのです。例えば、赤色は硝酸ストロンチウムSr(NO3)2、緑色は硝酸バリウムBa(NO3)2、青色は水酸化炭酸銅(II) CuCO3・Cu(OH)2、黄色はシュウ酸ナトリウムNa2C2O4によるものです。また、炎色反応は、身の回りでも実感しているはずです。ガスコンロにかけた味噌汁や鍋物が沸騰し、吹きこぼれた経験はありませんか?そのとき、ガスコンロの炎は、メラメラと黄色に燃え上がったのではないでしょうか。燃え上がったのは、吹きこぼれた汁の中に入っていた有機物が、高温でガス化して、燃え上がったことによる炎です。そして、黄色の炎は、その汁の中に入っていた塩化ナトリウムNaClを構成するナトリウムNaが燃えたことによる色です。
図.5 花火の色は、様々な金属の炎色反応によるものである
(4) イオンの性質のまとめ
(i) 陽イオンの性質
表.2 主な陽イオンの性質
Ag+ |
@ Cl- で白色沈殿(AgCl↓) A @の沈殿に光を当てると黒変(2AgCl→2Ag+Cl2) B Br- で淡黄色沈殿(AgBr↓) C I- で黄色沈殿(AgI↓) D 液性を問わずS2- で黒色沈殿(Ag2S↓) E CrO42- で赤褐色沈殿(Ag2CrO4↓) F NH3と無色の錯イオンを作る([Ag(NH3)2]+) G CN- と無色の錯イオンを作る([Ag(CN)2]-) H S2O32- と無色の錯イオンを作る([Ag(S2O3)2]3-) |
Cu2+ |
@ 水中で青色([Cu(H2O)4]2+) A 炎色反応で青緑色 B 液性を問わずS2- で黒色沈殿(CuS↓) C OH- で青白色沈殿(Cu(OH)2↓) D NH3と深青色の錯イオンを作る([Cu(NH3)4]2+) |
Pb2+ |
@ Cl- で白色沈殿(PbCl2↓) A @の沈殿は熱湯に溶解する B SO42- で白色沈殿(PbSO4↓) C 液性を問わずS2- で黒色沈殿(PbS↓) D CrO42- で黄色沈殿(PbCrO4↓) E 過剰のOH- と無色の錯イオンを作る([Pb(OH)4]2-) |
Fe3+ |
@ 水中で黄褐色([Fe(H2O)6]3+) A OH- で赤褐色沈殿(Fe(OH)3↓) B 中性〜塩基性ならS2- で黒色沈殿(FeS↓) C K4[Fe(CN)6]aqで濃青色沈殿(KFeIIFeIII(CN)6↓) D KSCNaqで血赤色の錯イオンを作る([Fe(SCN)(H2O)5]2+) E CN- と赤色の錯イオンを作る([Fe(OH)6]3-) |
Fe2+ |
@ 水中で淡緑色([Fe(H2O)6]2+) A OH- で緑白色沈殿(Fe(OH)2↓) B 中性〜塩基性ならS2- で黒色沈殿(FeS↓) C K3[Fe(CN)6]aqで濃青色沈殿(KFeIIFeIII(CN)6↓) D 空気中のO2に酸化されて、徐々にFe3+ に変化 E CN- と淡黄色の錯イオンを作る([Fe(OH)6]4-) |
Zn2+ |
@ OH- で白色沈殿(Zn(OH)2↓) A 中性〜塩基性ならS2- で白色沈殿(ZnS↓) B NH3と無色の錯イオンを作る([Zn(NH3)4]2+) C 過剰OH- と無色の錯イオンを作る([Zn(OH)4]2-) D CN2- と無色の錯イオンを作る([Zn(CN)4]2-) |
Al3+ |
@ OH- で白色沈殿(Al(OH)3↓) A 過剰のOH- と無色の錯イオンを作る([Al(OH)4]-) |
Ni2+ |
@ 水中で緑色([Ni(H2O)6]2+) A 中性〜塩基性ならS2- で黒色沈殿(NiS↓) B OH- で緑色沈殿(Ni(OH)2↓) C NH3と淡紫色の錯イオンを作る([Ni(NH3)6]2+) |
Ca2+ |
@ 炎色反応で橙赤色 A F- で白色沈殿(CaF2↓) B CO32- で白色沈殿(CaCO3↓) C SO42- で白色沈殿(CaSO4↓) |
Ba2+ |
@ 炎色反応で黄緑色 A CO32- で白色沈殿(BaCO3↓) B SO42- で白色沈殿(BaSO4↓) C CrO42- で黄色沈殿(BaCrO4↓) |
K+ |
@ 炎色反応で紫色 |
Na+ |
@ 炎色反応で黄色 |
Cd2+ |
@ 液性を問わずS2- で黄色沈殿(CdS↓) A NH3と無色の錯イオンを作る([Cd(NH3)4]2+) |
Mn2+ |
@ 水中で淡桃色([Mn(H2O)6]2+) A 中性〜塩基性ならS2- で淡赤色沈殿(MnS↓) |
NH4+ |
@ 沈殿を作らない A 強塩基を加えるとNH3が発生する B ネスラー試薬を加えると、褐色の沈殿が生じる(NHg2I↓) |
(ii) 陰イオンの性質
表.3 主な陰イオンの性質
F- |
@ Ca2+ と白色沈殿(CaF2↓) A HFは弱酸 B HFはガラスを溶かす(SiO2+6HF→H2SiF6+2H2O) |
Cl- |
@ Ag+ と白色沈殿(AgCl↓) A Pb2+と白色沈殿(PbCl2↓) B HClは強酸 |
Br- |
@ Ag+ と淡黄色沈殿(AgBr↓) A Cl2などを反応させるとBr2が生じる(2Br-+Cl2→Br+2Cl-) B HBrは強酸 |
I- |
@ I2と反応して褐色になる(I2+I-⇄I3-) A Ag+と黄色沈殿(AgI↓) B Cl2などを反応させるとI2が生じる(2I-+Cl2→I2+2Cl-) C HIは強酸 |
SO42- |
@ Ba2+, Ca2+, Sr2+, Pb2+ と白色沈殿(BaSO4↓, CaSO4↓, SrSO4↓, PbSO4↓) A 濃硫酸は不揮発性・吸湿性・脱水作用を持つ B 熱濃硫酸は酸化剤としてはたらく(H2SO4+2H++2e-→SO2+2H2O) |
CO32- |
@ NH4+ とアルカリ金属イオン以外とはほとんど沈殿する(BaCO3↓, CaCO3↓など) |
NO3- |
@ 沈殿を作らない A 濃硝酸は光により分解しやすい(4HNO3→4NO2+O2+2H2O) B 濃硝酸はキサントプロテイン反応でタンパク質を黄変 C 希硝酸は酸化剤としてはたらく(HNO3+3H++3e-→NO+2H2O) D 濃硝酸は酸化剤としてはたらく(HNO3+H++e-→ NO2+H2O) |
C2O42- |
@ NH4+ とアルカリ金属イオン以外とはほとんど沈殿する(BaC2O4↓, CaC2O4↓など) A 還元剤としてはたらく(C2O42-→2CO2+2e-) |
CrO42- |
@ 水中で黄色 A Ag+ と赤褐色沈殿(Ag2CrO4↓) B Ba2+, Pb2+ と黄色沈殿(BaCrO4↓, PbCrO4↓) C 酸性で赤橙色になる(2CrO42-+2H+→Cr2O72-+H2O) |
Cr2O72- |
@ 水中で赤橙色 A 酸性条件で酸化剤としてはたらく(Cr2O72-+14H++6e-→ 2Cr3++7H2O) B 塩基性で黄色になる(Cr2O72-+2OH-→2CrO42-+H2O) |
MnO4ー |
@ 水中で赤紫色 A 酸性条件で酸化剤としてはたらく(MnO4-+8H++5e-→Mn2++4H2O) B 中性〜酸性条件で酸化剤としてはたらく(MnO4-+2H2O+3e-→MnO2+4OH-) |
・参考文献
1) 石川正明「新理系の化学(上)」駿台文庫(2005年発行)