・溶解度積と濃度
【目次】
(1) 実験操作
@ 100 mLビーカーに純水50 mLを加えて、沸騰させる。沸騰後は、火を弱めて温度を保つ。
A 空の50 mLビーカーに1.0 mol/L臭化カリウムKBr水溶液10 mLを取る。
B Aのビーカーに1.0 mol/L硝酸鉛(II) Pb(NO3)2水溶液5 mLを加える。
C 四つ折りにしたろ紙をろうとに詰め、ろうと台にセットする。
D Bで生成した臭化鉛(II) PbBr2の白色沈殿を薬さじでろうとにかき出し、白色沈殿をろ取する。ペースト状の臭化鉛(II) PbBr2がろ紙の上に溜まるが、これを薬さじで押し付けるようにして、水気を絞り出す。
E ろ紙からDの沈殿を薬さじで耳かき1杯だけ取り、空の50 mLビーカーに入れる。
F @で温めた純水10 mLをEのビーカーに加え、ガラス棒でよくかき混ぜる。
G Fで沈殿が溶け残った場合は静置して、Fのビーカーの上澄み液を2本の試験管に底から1 cmほどの量になるように取り分ける。
H 一方の試験管に2 mLの1.0 mol/L硝酸鉛(II) Pb(NO3)2水溶液を少量ずつ加える。加えるごとに試験管内の変化を観察する。
I もう一方の試験管に2 mLの1.0 mol/L臭化カリウムKBr水溶液を同様に少しずつ加え、変化を観察する。
(2) 理論
1.0 mol/L臭化カリウムKBr水溶液10 mL と1.0 mol/L硝酸鉛(II) Pb(NO3)2水溶液5 mLを混ぜると、溶液中の鉛(II)イオン濃度[Pb2+]と臭化物イオン濃度[Br- ]は、次のようになります。
臭化鉛(II) PbBr2の溶解度積は、20℃では4.9×10-5 mol3/L3です。[Pb2+]=0.33 mol/Lと[Br- ]=0.67 mol/Lを溶解度積の式に代入すると、次のように0.15 mol3/L3となり、溶解度積の値4.9×10-5 mol3/L3より大きくなるので、20℃では臭化鉛(II) PbBr2の白色沈殿が生成することが分かります。
この臭化鉛(II) PbBr2の白色沈殿をろ取して、少量を取って熱水に溶かします。100℃の水では、臭化鉛(II) PbBr2の溶解度積は6.9×10-3 mol3/L3となり、溶解度で換算すると、20℃の約5.2倍も水に溶けるようになります。
PbBr2 ⇄ Pb2+ + 2Br-
この臭化鉛(II) PbBr2水溶液を等量2本の試験管に取り、一方には臭化カリウムKBr水溶液を、もう一方には硝酸鉛(II) Pb(NO3)2水溶液を加えます。すると、硝酸鉛(II) Pb(NO3)2水溶液を加えたときには、臭化鉛(II) PbBr2の沈殿は生成しにくいのですが、臭化カリウムKBr水溶液を加えたときには、臭化鉛(II) PbBr2の沈殿がすぐに生成します。これは、次に示す臭化鉛(II) PbBr2の溶解度積の式より、溶解度積Kspが臭化物イオンBr- 濃度の2乗に比例するため、臭化物イオンBr- 濃度を増大させたときに、臭化鉛(II) PbBr2の沈殿が生成しやすいのだと考えられます。
[Pb2+][Br- ]2=Ksp