・塩化アンモニウムの再結晶
【目次】
(1) 実験操作
@ 塩化アンモニウムNH4Clを4.0 g量り取り、試験管の中に入れる。
A メスシリンダーで水7.5 mLを量り取り、@の試験管の中に入れる
B ガラス棒でよく攪拌して、試験管の底を触り、温度の変化を確かめる。
C 500 mLビーカーに水を入れ、約80℃の温度に加熱する。試験管を水浴で温め、結晶を完全に溶かす。
D 試験管を取り出し、試験管立てに静置する。ゆっくりと室温で放冷して、結晶が現れる様子を観察する。
E 結晶が析出し終わったら、再び水浴で温め直してみる。
(2) 理論
塩化アンモニウムNH4Clは、温度による溶解度の差が極めて大きい物質です。沸騰水では、100 gの水に対して70 g以上も溶けるのに、室温の20℃まで冷やすと、37 g程度まで溶解度が低下してしまいます。実験で使う塩化アンモニウムNH4Clは、80℃にすればすべてが溶ける量にしてありますが、温度が低くなると、塩化アンモニウムNH4Clが溶けていられなくなり、結晶として析出(再結晶)してきます。これを再び温めると、結晶が溶けますし、冷やされれば再結晶するというように、この実験は、繰り返し楽しむことができます。
表.1 塩化アンモニウムNH4Clの溶解度 (単位は〔g/100 g H2O〕)
温度 |
0℃ |
10℃ |
20℃ |
30℃ |
40℃ |
50℃ |
60℃ |
70℃ |
80℃ |
90℃ |
100℃ |
溶解度 |
29.4 |
33.2 |
37.2 |
41.4 |
45.8 |
50.4 |
55.3 |
60.2 |
65.6 |
71.2 |
77.3 |
この再結晶の実験の面白いところは、「結晶の現れ方」です。容器の端の方から、固まるようにして結晶化するのではなく、透明の溶液中から、突然生まれてくるようにして「星形の結晶」が湧いてくるのです。しかも、結晶の析出は、雪が舞うようにして、結晶が上下に運動しながら再結晶が進んでいきます。
図.1 塩化アンモニウムNH4Clの再結晶の様子
なお、水に塩化アンモニウムNH4Clを溶かすと、試験管の中が冷たくなりますが、逆に水に溶けていた塩化アンモニウムNH4Clが固体の結晶として析出するときは、試験管の中が温かくなります。これは、塩化アンモニウムNH4Clが結晶として析出する反応が、発熱反応(ΔH<0)だからです。
NH4Cl aq → NH4Cl(固) + aq ΔH =−14.8 kJ
そのため、塩化アンモニウムNH4Clの結晶が析出すると、熱によって試験管の中に上向きの対流が起こり、結晶が成長するにつれ、結晶は上昇していきます。 しかし、結晶が大きくなりすぎて、上向きの対流でも支えきれなくなると、今度は下向きに下り始めます。このような理由で、対流が常時起こり、結晶の上下動が見られるようです。
・参考文献
1) 山田暢司「実験マニア」亜紀書房(2013年発行)