・アルコールと関連物質の性質


(1)実験操作

[実験1:メタノールCH3OHの酸化]

@ 200 mLビーカーに水を7分目程度まで入れ、約50に加熱する。

A 試験管にメタノールCH3OH2 mL取り、その臭いを確認する。さらに水1 mLを加えたあと、@の水浴で温める。

B 試験管ばさみでコイル状の銅線を保持してガスバーナーで熱し、炎から出して黒く変色したら、Aの試験管に入れる。この操作を数回繰り返す。

C 試験管の内容物の臭いを確認し、ゴム栓をして保管する。

 

[実験2:銀鏡反応]

D 新しい別の試験管に0.1 mol/L硝酸銀AgNO3水溶液2 mLを取り、2 mol/Lアンモニア水を暗褐色沈殿ができるまで、一滴ずつ加える。

E 暗褐色の沈殿ができたら、沈殿が溶けるまで、試験管を振りながらアンモニア水をさらに一滴ずつ加える。このときに加えたアンモア水の滴数を覚えておく。

F 暗褐色沈殿が溶けたら、Eで加えたアンモア水と同じ量をさらに一滴ずつ加える。

G Fの試験管に0.1 mol/L 水酸化ナトリウムNaOH水溶液を1 mL加え、よく振り混ぜる。

H Cで得られたメタノールCH3OHの酸化物を、Gの試験管に1 mL加え、約60の水浴に付けて変化を観察する。このときに試験管を振ると、暗褐色の沈殿が生成してしまうので、試験管は振らないこと。

I 銀鏡が試験管内に生成したら、試験管の内容物を廃液入れに入れ、廃液は食塩水で薄める。

Agが付着した内壁は、硝酸HNO3または硝酸鉄(III) Fe(NO3)3水溶液で洗浄するときれいになる。

 

(2)理論

 ガスバーナーで銅線を焼くと、銅線の表面が酸化銅(II) CuOになります。そして、これをメタノールCH3OHの蒸気に触れさせると、酸化銅(II) CuOが酸化剤となり、メタノールCH3OHが酸化されて、ホルムアルデヒドHCHOが生成します。

 

CH3OH + CuO → HCHO + H2O + Cu

 

 また、硝酸銀AgNO3水溶液にアンモニア水を加えると、暗褐色の酸化銀(I) Ag2Oの沈殿を生じますが、さらに過剰のアンモニア水を加えると、酸化銀(I) Ag2Oの沈殿が溶けてジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH3)2]+ となり、無色透明な「アンモニア性硝酸銀水溶液」ができます。この水溶液は、アルデヒドや還元糖の検出に用いられ、発見者であるドイツの化学者ベンハルト・トレンスの名にちなんで、「トレンス試薬(Tollens’ reagent)」と呼ばれます。ただし、トレンス試薬は、アンモニア水の添加が過剰になると、アルデヒドや還元糖の検出感度が低下するため、アンモニア水は少しずつ加える必要があります。

 

Ag2O + 4NH3 + H2O → 2[Ag(NH3)2]+  + 2OH-

 

トレンス試薬にアルデヒドを加えて約60℃で温めると、ジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH3)2]+ が還元されて、器壁に銀Agの微粒子が析出し、きれいな鏡のようになります。これを「銀鏡反応(silver mirror reaction)」といいます。銀鏡反応は、工業的にも銀メッキの手法として利用されています。

 

RCHO + H2O + 2[Ag(NH3)2]+ → 2Ag↓()  + RCOO- + NH3 + 3NH4+

 

.1  ホルムアルデヒドHCHOは、銀鏡反応に陽性である

 

 なお、トレンス試薬は、強塩基性の状態で長時間放置しておくと、硝酸銀AgNO3とアンモニアNH3が反応して、窒化銀Ag3Nになります。反応式は次の通りで、アンモニアNH3の水素原子Hが、水酸化物イオンOH- に引き抜かれることで窒化物イオンN3- になり、これが銀(I)イオンAg+と結合して生成します。塩基性が強かったり、水H2Oが蒸発したりすると、平衡が右に移動して、窒化銀Ag3Nが生成しやすくなります。

 

3Ag+ + NH3 + 3OH-  Ag3N + 3H2O

 

窒化銀Ag3Nは、「雷銀」とも呼ばれる黒色の結晶で、外部からの刺激に非常に敏感であり、少しの摩擦でも爆発します。実際に、学校現場でもトレンス試薬から窒化銀Ag3Nが生成して、爆発事故が起こった例があります。そのため、トレンス試薬を実験で使用する際は、実験の直前に調製する必要があります。また、廃液も酸性にしてアンモニアNH3を潰す、または塩化ナトリウムNaClを加えて硝酸銀AgNO3を潰すなどの方法で、適切に処理する必要があります。


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・参考文献

1) 辰巳敬/伊藤眞人/窪田好浩/11名「化学」数研出版(2016年発行)