・空き缶で炭を作ってみよう!
【目次】
(1) 実験操作
@ スチール缶の上面を、缶切りなどで切り取る。
A 炭にしたい野菜や果物を、スチール缶に隙間ができるだけなくなるようにして充填する。このとき、缶の内部に隙間があると、酸素が供給されてしまって、上手く炭化されなくなるので注意。
B アルミホイルを25 cm程度に切り取り、四つ折りにして、スチール缶の口をしっかり塞ぐ。
C シャープペンシルなどで、アルミホイルの端に直径1 cm程度の穴を開ける。
D 三脚の上に、Cで開けた穴が下にくるようにしてスチール缶を静置させ、ガスバーナーで強熱する。このとき、大きな炎でスチール缶を包むようにして加熱するとよい。また、実験台が熱くなるので、水で濡らした雑巾を、ガスバーナーの下に敷くようにする。
E 乾留が始まると、可燃性ガスがアルミホイルに開けた穴から噴き出てくるので、これをもう1台のガスバーナーで燃焼させる。
F ときおり可燃性ガスを燃やしているガスバーナーをずらしてみて、可燃性ガスの様子を見る。
G 可燃性ガスが、ガスバーナーなしで燃焼するようになったら、Eで設置したガスバーナーの炎を消す。
H 可燃性ガスが出なくなったら、ガスバーナーを消して、スチール缶を放冷する。
I 缶が冷えたら、作った炭を新聞紙の上に取り出す。
(2) 理論
木材は、セルロースやヘミセルロース、リグニンなどの物質から構成されています。通常、木材を空気中で強熱した場合は、酸素O2と反応して燃焼が起こります。しかし、木材を空気が少ないところで加熱すると、280℃くらいから急激に組成分解を始め、二酸化炭素CO2、一酸化炭素CO、水素H2、炭化水素CmHnなどがガスとなって揮発し、自然発火が抑えられて、「炭化(carbonization)」が進みます。このような反応を、一般的に「乾留(dry
distillation)」といいます。
乾留は、酸素O2が少ないところでは、ガスに火が点くことなく、やがて小さな炭素Cの結晶が不規則に並んだ「無定形炭素」に変わっていくために起こります。こうして炭化が進行することにより、木材は多孔質の物質に変化していき、いわゆる「炭」ができます。炭は、小さな孔が無数に空いているので、単位質量当たりの比表面積が実質的に広くなり、酸素O2が炭の内部にまでたくさん入り込めるので、木材よりも燃えやすく、火持ちがいいです。
実験を始めると、操作Cで開けた穴から、勢いよく水蒸気H2Oや可燃性ガスを含んだ煙が出てくるようになります。この煙をそのままにしておくと、教室や衣類に煙の臭いが付いてしまいます。そこで、次の図.1のように、もう一台のガスバーナーでこの煙を燃やしてやると、臭いが教室に残りにくくなります。
図.1 可燃性ガスをもう一台のガスバーナーで燃焼させる
そして、しばらくスチール缶を強熱していると、スチール缶から出る可燃性ガスの温度が、発火点に達するようになります。すると、可燃性ガスが空気中に出ただけで、ガスバーナーの炎なしでも、燃焼するようになります。可燃性ガスが出なくなったときが、乾留が終わった合図となるので、あとは可燃性ガスの放出がなくなるまで、じっくり加熱を続けるだけです。可燃性ガスが出なくなったら、火を消して放冷し、缶が手で触れるようになったら、炭を新聞紙の上などに取り出してみてください。
(3) 結果
この実験では、普通は炭にすることのない野菜やフルーツなどを炭にすることができます。水分量が多いものだと、少し時間がかかるので、できるだけ水分量の少ないものがおすすめです。炭にした野菜や果物は、燃料にすることもできますし、臭い分子を吸着するので、消臭剤にもなります。上手くできたものは、部屋のインテリアなどにしてはどうでしょうか。
図.2 炭になったブロッコリーとレモン