・第16族元素(酸素族元素)
【目次】
(1) 第16族元素
周期表において、第16族に属する酸素O・硫黄S・セレンSe・テルルTe・ポロニウムPoなどの元素を、総称して「酸素族元素(chalcogen)」といいます。酸素族元素の原子は、最外殻電子配置がns2np4である元素(n=2,3,4・・・)です。外部から電子を2個受け取って、貴ガスと同じ電子配置を作って安定化するため、-2のイオン価を持つ陰イオンが広く知られています。英語名の「chalcogen」は、ギリシア語で「鉱物を生じるもの」という意味を持ち、その名の通り、金属元素と化合物を形成して種々の鉱石の主成分となっています。
酸素族元素の単体のうち、酸素O2のみが常温で気体であり、他はすべて常温で固体です。いずれもハロゲンに次いで電気陰性度が高いので、これらの単体は反応性が高いものが多いです。酸素族元素の単体は、周期が増大するにつれて、金属性が増していきます。酸素OからセレンSeは、共有結合性の物質であり、テルルTeとポロニウムPoは半金属です。さらに、硫黄SやセレンSeでは、同じ元素の原子間で結合を作り、鎖状に長く連なって結合する性質が見られます。この性質を「カテネーション(catenation)」といいます。カテネーションは、炭素原子において最も顕著に見られる現象で、有機化合物の多様性の起源です。
図.1 ゴム状硫黄は、50万個以上の硫黄原子が繋がった構造である
(2) 酸素
(i) 酸素O2
単体の「酸素(oxygen)」は、常温常圧では、無色無臭で助燃性を持つ気体として存在します。「酸の素」と書くのは、酸素を発見したフランスの化学者アントワーヌ・ラボアジエが、硫酸H2SO4や硝酸HNO3などの酸の多くに、酸素原子が含まれていることから、着想を得て命名したものです。ただし、塩酸HClのように酸素原子を含まない酸もあるので、ラボアジェの考えは誤りでした。なお、「酸素」という和訳は、江戸時代の蘭学者である宇田川榕菴の著書「舎密開宗(1837年)」で初めて登場しました。単体は二原子分子O2からなり、水に溶けにくく、空気中に体積比で20.8%を占めます。酸素は、空気や海水、地殻中の岩石、有機化合物などの構成元素であり、地殻中では、最も質量の多い元素です。
図.2 ラボアジエは様々な化学に関する業績から、「近代科学の父」と称される
今日では、空気中に大量の酸素O2がありますが、地球が誕生したときからそうだった訳ではありません。初期の空気には、酸素O2はほとんど含まれておらず、二酸化炭素CO2と窒素N2が、その大部分を占めていました。初期の生物は、酸素O2のない環境で活動していたのです。地球上の酸素O2は、単細胞生物の「光合成(photosynthesis)」によって生成されました。約28億年前に発生した「シアノバクテリア(藍藻類)」は、太陽の光をエネルギー源として、水H2Oと二酸化炭素CO2から、炭水化物を作りました。その過程で、副産物として酸素O2が生成され、それが今日の地球の大気を作っているのです。光合成によって、植物が供給する酸素O2は、年間1,000億tと見積もられています。
6CO2 + 6H2O → C6H12O6 + 6O2
光合成は、海水の成分も大きく変えました。初期の海水には、大量の鉄分が含まれており、シアノバクテリアが作り出す酸素O2は、最初は主に海水に溶けている鉄分を酸化するために使われました。こうして生成された酸化鉄(III) Fe2O3は、現在も海底に沈殿しています。また、年代測定によると、およそ28億年前から沈殿が始まったことも分かり、そこからシアノバクテリアの起源が推定されました。光合成が始まってから、5億年ほどで海水の鉄分がなくなったので、そのあとから大気中の酸素O2が徐々に増え始め、8億年ほど前になって、現在と同じぐらいの酸素濃度に達したと考えられます。それまで地球上にいたのは、酸素O2を必要としない嫌気性の生物です。そのような生物にとって、反応性の高い酸素O2は有害物質なので、シアノバクテリアのしたことは、ある意味で「地球初の大規模な環境破壊」だということができます。このように地球の大気に酸素O2が急激に増えていった現象を、「大酸化イベント」といいます。
図.3 シアノバクテリアが化石となったストロマトライトは、世界各地で発見されている
ほとんどの生物にとって、反応性の高い酸素O2は有毒だったので、大気中の酸素濃度が高くなるにつれて、多くの生物が死にました。生き延びた生物は、有毒な酸素O2から、身を守る方法を進化させたのです。人間だけでなく、地球上のほとんどの生物は、酸素O2がなければ生きられないにも関わらず、酸素O2が死に至る猛毒でもあるというのは、皮肉なパラドックスです。生き延びた生物は、「酸素呼吸に成功した生物」を取り込んで、自分の体の一部にしました。生物の歴史を振り返ると、このような形の進化は、過去に2回起きています。その1つが、私たちの細胞内に存在する「ミトコンドリア」、もう1つが植物に存在する「葉緑体」です。遺伝子を調べると、ミトコンドリアは「アルファプロテオバクテリア」という細菌、葉緑体は「シアノバクテリア」という細菌の遺伝子とよく似ていることが分かっています。
図.4 ミトコンドリアと葉緑体は、もともとは別の生物で、進化の過程で細胞内に取り込まれたと考えられている
私たちの細胞内に存在する「ミトコンドリア」という細胞内小器官は、酸素O2を使って化学エネルギーを生成し、細胞の活動を支えています。しかし、酸素分子O2が励起状態になったり、あるいは酸素原子Oが生成したりする場合には、酸素の反応性は極めて高くなります。このような状態の酸素を、「活性酸素(active oxygen)」といいます。例えば、金属亜鉛の存在下で、酸素分子が活性化される過程は、次のような酸素原子Oの生成に基づきます。
Zn + O2 → ZnO + O
このように発生した活性酸素は、様々な物質に対して、非特異的な化学反応をもたらすことが知られています。特に細胞内の抗酸化酵素で分解しきれなかった過剰な活性酸素は、細胞膜の脂質と反応し、それを変質させ、老化現象を引き起こすといわれています。活性酸素は、老化現象の重大な原因の1つなのです。さらに、活性酸素は細胞内のDNAと反応して、遺伝子発現機能を攪乱させ、発ガンを引き起こします。一説によれば、活性酸素は1日に細胞当たり約10億個が発生し、1日に細胞当たり数万個のDNAが、活性酸素によって損傷するといわれています。活性酸素は、体内に取り込まれた酸素O2から発生する他、外的な要因で発生するものもあります。例えば、紫外線や放射線などの高エネルギーの電磁波が細胞に照射されると、細胞内に活性酸素が発生することが知られています。
図.5 活性酸素などが原因で、私たちの体には毎日5,000個のガン細胞が発生している
一方で、活性酸素には、プラスの面もあります。体内に病原菌やウイルス、カビなどが侵入したとき、活性酸素は免疫細胞などで積極的に作られ、病原菌などを殺す有用な役目を持っているのです。ガン治療としての放射線治療も、この働きを利用したものです。つまり、活性酸素は全くなくても良いというものではなく、マイナスとプラスの両面があるのです。
図.6 様々な活性酸素
活性酸素の産生を抑制できれば、老化防止やガン化予防にも繋がるはずです。そのような考えから、これまでに様々な研究が試みられてきました。2010年には、中部大学の三輪錠司らの研究グループが、意外な食品に効果があることを突き止めたと発表しました。それは、以前から殺菌や消臭効果があるといわれてきた「ワサビ」です。中でも、ワサビの辛味成分である「アリルイソチオシアネート」が、活性酸素の除去に高い効果をもたらすことが分かったといいます。
しかしながら、この辛味成分のアリルイソチオシアネートは、ワサビを丸かじりしても得られません。実際、採れたてのワサビをかじっても、ほとんど辛味を感じません。それどころか、ワサビの根茎をかじると、甘味さえ感じるといいます。実は、ワサビの細胞の中に含まれているのは、辛味の素となる「シニグリン配糖体」とこれを分解する「ミロシナーゼ」という酵素です。ワサビをすりおろすなどして、細胞が壊れて両者が混ざり合うと、加水分解酵素ミロシナーゼが働いて、辛味成分であるアリルイソチオシアネートが生成するのです。
図.7 アリルイソチオシアネートは、草食動物への忌避物質として機能していると考えられている
酸素O2の沸点は-183℃なので、-196℃の液体窒素N2で空気を冷却すると、凝縮が起こって酸素O2だけが液化します。液体および固体の酸素O2は、淡青色を呈します。この色の変化は、光を吸収するときに、分子2個ずつが協力すると現れるものです。液体や固体のように、分子同士が互いに接近しているときにのみ見られる現象です。さらに、酸素O2は不対電子のスピンが残っているため、「常磁性(paramagnetism)」を持ちます。そのため、液体酸素O2にネオジム磁石などの強力な磁石を近付けると、ほんの少しだけ引き寄せられます。気体も常磁性を持つので、この性質を応用すると、人工的な空気、例えば、未熟児用の保育器内の酸素濃度を測ることもできます。つまり、気体の磁性を観測していれば、それが酸素分子O2の濃度を表していると考えられるからです。
液体酸素O2を可燃物に染み込ませて点火すると、大爆発を引き起こします。酸素分圧が極めて高くなっているからです。この応用で、液体酸素O2を砂糖やデンプンに吸収させたものを「液体酸素爆薬」といいます。安価に製造できる爆薬として、1960年代までは露天掘りの鉱山などで使用されたといいます。多数の発破をかけるとき、不発があっても回収する必要がないことが、最大の利点でした。短時間で液体酸素O2が気化し、火薬が無効になるからです。
図.8 液体酸素O2は淡青色を呈する
酸素O2は、電気陰性度が大きいために反応性に富み、他のほとんどの元素と化合して、酸化物を生成します。工業的には、液体空気の分留で得られ、水分や二酸化炭素CO2を除去した約-200℃の液体空気から、窒素N2(b.p.-196℃)と酸素O2(b.p.-183℃)などを分離しています。実験室では、二酸化マンガンMnO2を触媒に用いた塩素酸カリウムKClO3の熱分解や過酸化水素H2O2の分解、水H2Oの電気分解などで発生させます。ちなみに、塩素酸カリウムKClO3は、触媒がなくても400℃以上の高温にすれば、分解して酸素O2を発生させます。しかし、二酸化マンガンMnO2の触媒があれば、70℃程度でも分解反応が起こるようになります。酸素O2は、水に溶けにくいので、水上置換法で捕集します。
2KClO3 → 2KCl + 3O2
2H2O2 → O2 + 2H2O
2H2O → 2H2 + O2
酸化物は、ブレンステッド酸ないしブレンステッド塩基としての性質を示します。水H2Oと反応してオキソ酸となる酸化物や、塩基と反応して塩を生じる酸化物を、「酸性酸化物(acidic oxide)」といいます。二酸化炭素CO2や二酸化硫黄SO2など、非金属元素の多くの酸化物がこれに属します。それに対して、水H2Oと反応して塩基になる酸化物や、酸と反応して塩を生じる酸化物を、「塩基性酸化物(basic oxide)」といいます。酸化カルシウムCaOや酸化銅(II) CuOなど、金属元素の多くの酸化物がこれに属します。また、酸とも塩基とも反応して塩を生じる酸化物を、「両性酸化物(amphoteric oxide)」といいます。酸化アルミニウムAl2O3や酸化亜鉛ZnOなどが、これに属します。
表.1 酸化物の分類 ( は水に溶けにくい酸化物)
分類 |
性質 |
化学結合 |
例 |
酸性酸化物 |
塩基と反応 |
共有結合からなる分子性物質 |
CO2、NO2、SiO2、P4O10、SO2、SO3、Cl2O7など |
塩基性酸化物 |
酸と反応 |
イオン結合からなるイオン性物質 |
Na2O、MgO、CaO、Fe2O3、CuO、BaOなど |
両性酸化物 |
酸とも塩基とも反応 |
イオン結合からなるイオン性物質 |
Al2O3、ZnO、SnO、PbOなど |
中性酸化物 |
酸とも塩基とも反応しない |
共有結合からなる分子性物質 |
CO、NO、N2O、H2Oなど |
分子の中心となる元素に何個かの酸素原子が結合し、さらにその酸素原子のいくつかに水素原子が結合した構造の酸を、「オキソ酸(oxoacid)」といいます。オキソ酸の多くは、非金属元素の酸化物(酸性酸化物)に水H2Oを作用させると生成します。例えば、十酸化四リンP4O10に水H2Oを作用させるとリン酸H3PO4が、三酸化硫黄SO3に水H2Oを作用させると硫酸H2SO4が、七塩化二塩素Cl2O7に水H2Oを作用させると過塩素酸HClO4が生成します。
P4O10 + 6H2O → 4H3PO4
SO3 + H2O → H2SO4
Cl2O7 + H2O → 2HClO4
オキソ酸としての酸の強さは、中心原子の種類やそれに結合する酸素原子の数によって決まる傾向があります。中心原子に結合する酸素原子の数が同じである場合、中心原子の電気陰性度が大きいほど、強い酸になります。例えば、過塩素酸HClO4、硫酸H2SO4、リン酸H3PO4の酸性度は、HClO4>H2SO4>H3PO4となります。また、中心原子が同じである場合、それに結合する酸素原子の数が多いほど、強い酸になります。例えば、過塩素酸HClO4、塩素酸HClO3、亜塩素酸HClO2、次亜塩素酸HClOの酸性度は、HClO4>HClO3>HClO2>HClOとなります。
酸の強さは、共役塩基の安定性と強い関連があります。一般的に共役塩基が安定な構造であるほど、その酸の酸性度は強くなります。すなわち、中心原子の電気陰性度が大きく、それに結合する酸素原子の数が多いほど、共役塩基の負電荷が非局在化して、より安定化できるのです(酸と塩基(酸と塩基の強さ)を参照)。
図.9 様々なオキソ酸
(ii) オゾンO3
酸素Oの同素体としては、三原子分子のオゾンO3が知られています。オゾンO3は、地上から20〜30 kmに位置する「オゾン層(ozone layer)」などに存在しています。オゾンO3は、酸素O2に短波長の強い紫外線(波長185 nm以下)を照射するか、乾燥させた酸素O2を無声放電することで得られます。ちなみに、無声放電というのは、空隙をはさんでガラスと電極を置いて、適当な交流電圧を加えることで起こる、火花や音の発生を伴わない放電のことです。
3O2 → 2O3
オゾンO3は、淡青色を呈する気体であり、高濃度では猛毒です。ごく低濃度であっても、顎の痛み、咳き込み、くしゃみ、肺の充血などの症状が現れます。生臭く独特の臭気(特異臭)を持ち、オゾンO3の英語名「ozone」は、ギリシア語の「ozein(におう)」に由来しています。電気モーターや溶接機の周囲で変な臭いがすることがありますが、これはオゾンO3が発生しているためです。落雷によっても発生するので、落雷直後はオゾンO3の臭いが漂います。
オゾンO3は、容易に分解してO2とOに変わります。分解した原子状のOは、極めて反応性が高いので、オゾンO3は酸素O2に比べて、強い酸化力を持つことになります。例えば、オゾンO3をヨウ化カリウムKI水溶液に通じると、ヨウ化物イオンI− が酸化されてヨウ素I2が遊離します。そのため、オゾンO3はヨウ化カリウムデンプン紙を使えば、簡単に検出することができます。オゾンO3によって生成したヨウ素I2が、紙中のデンプンと反応することで、青紫色を呈するのです。
O3 + 2KI + H2O → I2 + 2KOH + O2
図.10 オゾンO3はヨウ化カリウムデンプン紙を青紫色に変える
地上から20〜30 km程度の成層圏には、オゾンO3が約3×10-4 %程度含まれており、これが「オゾン層(ozone layer)」と呼ばれています。この層は地球全体を覆って、宇宙からの長波長の紫外線(波長240 nm〜340 nm)を吸収して、酸素O2に分解することで、紫外線障害から地上の生物を保護しています。オゾン層の存在によって、地表に到達する紫外線量は、大気圏外の約10-30と大幅に減衰されています。オゾン層を地球表面の圧力である1気圧まで圧縮したとすると、約3 mmの厚さにしかなりませんが、地球上の生命体にとって不可欠な基本的要素の一部です。1995年には、オゾン層の形成機構を解明したアメリカの化学者フランク・シャーウッド・ローランドが、ノーベル化学賞を受賞しました。
O3 → O2 + O
図.11 地上から20〜30 km程度の成層圏にはオゾン層があり、紫外線障害から地上の生物を保護している
現在では、「フロンガス(freon gas)」などの人間活動によって大気中に放出された塩素Clを含む化学物質が、オゾン層を破壊していることが大きな問題になっています。オゾン層の破壊による紫外線の増加が、皮膚ガンの増加に繋がるとされているからです。成層圏のオゾンO3が1%減ると、皮膚ガンが2%増えるというデータがあります。成層圏のオゾンO3の量は、長い間ほとんど変わっていませんでしたが、1980年代になって減少が指摘され始めました。
図.12 世界的なオゾン全量の変化
オゾン層破壊の原因物質であるフロンガスを開発したのは、アメリカの化学者であるトマス・ミジリーです。20世紀初頭、冷蔵庫内の温度を下げる冷媒として使われていたアンモニアNH3と二酸化硫黄SO2の有毒性が問題になっており、ミジリーは、その代替物を探す研究をしていました。そこで、ミジリーが発見したのが、フロンガスであったという訳です。フロンガスは、メタンCH4やエタンC2H6などの主骨格を残したまま、水素原子Hをフッ素原子Fや塩素原子Clに置換した化合物のことです。代表的なものとして、ジクロロジフルオロメタンCCl2F2やクロロペンタフルオロエタンC2ClF5などがあります。
ミジリーは、フロンガスの毒性が小さく、そして燃えにくいことを示すために、自らフロンガスを吸い込み、それを菅の中に吐き出し、ロウソクの炎を消すデモンストレーションまで行いました。その甲斐あってか、アンモニアNH3と二酸化硫黄SO2の代わりに、フロンガスを搭載した冷蔵庫やエアコンが、すぐに販売されるようになりました。フロンガスは、化学的に安定で不燃性であり、無毒で無臭、そして金属を腐食しませんでした。もう消費者は、パイプの腐食や危険なガス漏れを心配せずに済むようになりました。開発された当時は、フロンガスは「夢の化学物質」として、世界中でもてはやされました。冷蔵庫の売り上げは増大し、食中毒は減少しました。そのときは、万事上手くいくと思われていました。
図.13 冷媒として使われていた主なフロンガス
ところが、天が落ちてきました――というより、天に穴が空き、有害な紫外線が差し込み始めました。1970年代になると、フロンガスの環境に与える影響が分かり始めました。最初の切っ掛けは、「陸地から遠く離れた海洋上の大気からもフロンガスが検出された」ことでした。そして、試しに報告されたフロンガス濃度に地球大気の全体積をかけてみたところ、これがフロンガスのこれまでの生産総量とほぼ一致したのです。これが意味することは、「放出されたフロンガスは、ほとんど分解されず大気中に堆積する」ということです。放出されたフロンガスの大気中の挙動について、チャンバー実験(容器に封入した大気にフロンガスを注入して光を照射する実験)で分かったことは、地表から放出された化学種の多くは、対流圏内で可視部〜長波長側の紫外線によって分解されるのに対し、可視部〜長波長側の紫外線を吸収しないフロンガスは、対流圏で分解されずに10年以上の歳月をかけて成層圏まで運ばれ、そこで240 nm以下の波長の強い紫外線によって分解されるということです。分解されたフロンガスは、過剰な紫外線から私たちを保護している成層圏のオゾンO3を破壊していました。南極の人工衛星の映像を見ると、まるで上空に穴が空いたように見えることから、「オゾンホール」と呼ばれるようになりました。
図.14 南半球に現れたオゾンホール
大気中に放出され、成層圏に達したフロンガスは、太陽の紫外線の作用によって分解され、塩素原子Clを放出します。この塩素原子ClはオゾンO3と反応し、一酸化塩素ClOと酸素O2になります。そして、発生した一酸化塩素ClOは塩素原子Clを放出し、この塩素原子ClがさらにオゾンO3と反応することになります。このような連鎖反応によって、たった1個の塩素原子Clが、約10万個のオゾンO3を分解していくと考えられています。しかも、発生したフロンガスは、大気中に100年以上も漂い続けるといいます。そこで、1987年にはモントリオール議定書が締結され、オゾン層破壊の原因となる物質の全廃に向けて、段階的にフロンガスを廃止する計画が立てられました。フロンガスという「英雄」が、「悪人」になった瞬間でした。
フロンガス → Clを放出 ・・・反応@
Cl + O3 → ClO + O2 ・・・反応A
2ClO → 2Cl + O2 ・・・反応A
図.15 フロンガスによるオゾン層の破壊
世間では、フロンガスを開発したミジリーを批判する風潮があります。例えば、環境歴史学者のJ.R.マクニールは、ミジリーを「有史以来、地球の大気に最も大きな影響をもたらした生命体」と酷評しています。しかし、1930年代の時点では、100を超える特許を取得するなど、ミジリーの社会に対する貢献は目覚ましいものでした。新しい道を切り開いたフロンガスが、まさか50年後にオゾン層にも穴を切り開こうとは、誰にも予測できなかったことです。当時は、食品の冷蔵ができないばかりに、多くの食中毒が発生していました。ミジリーは、「冷却」という科学に多きく貢献し、間違いなく多くの命を救ったのです。
現在では、全世界でフロンガスの使用が規制され、同時に塩素原子Clを含まない「代替フロン」の開発や生産が進んでいます。しかし、代替フロンは、オゾン層を破壊する懸念は比較的小さいものの、地球温暖化を促進する懸念はフロンガス同様に大きく、いずれは全廃されなければならない運命にあると言えそうです。
図.16 フロンガスを開発したアメリカの化学者トマス・ミジリー
(iii) 水H2O
自然界に大量に存在している水H2Oは、常温常圧でわずかに青色を呈す透明な液体で、すべての生命に欠かすことのできない物質です。人体の60%は水分でできていて、健康のためには毎日2.5 Lの水分を摂る必要があります。自然界に存在する大部分の水H2Oは、地球表面の71%を占める大洋にあって、平均深さ6 kmもあります。原始時代の若い地球の内部にあった熱で、雲母のような化合物でできた岩石が熱分解して、この水ができたと考えられています。地中で新しくできた水分子H2Oは、溶岩流とともに地表に出て水蒸気となり、それが雲を作って、地球が冷えたときに雨になりました。ですから、今の大洋は、かつては岩石だったと考えられます。
図.17 現在の大洋は、かつては岩石だったと考えられる
水H2Oの最も奇妙な性質は、それが室温で液体であるということです。水H2Oは分子量のわりに100℃という高い沸点を示し、これは実に驚くべきことです。というのは、アンモニアNH3(b.p.-33℃)やメタンCH4(b.p.-162℃)、水の一番近い親類である硫化水素H2S(b.p.-61℃)のように、こんな小さな分子量の分子は、普通は気体であって当然と思われるからです。水H2Oが液体になっていられる理由は、水分子H2Oが「水素結合のネットワーク」によって、互いに強く引き合っているからです。その連結の結果、水分子H2Oは気体として自由気ままに熱運動するのではなく、液体としてある程度まとまった集団を作ります。
図.18 水分子H2Oは互いに水素結合するので、同程度の分子量の物質より沸点が高い
水H2Oの奇妙さは、それが液体であることにとどまりません。大抵の物質は、固体の方が液体よりも密なものですが、0℃の氷は、0℃の水よりも軽いのです。そのため、氷は水に浮かんで氷山になったり、池の表面で氷になったりします。この水面にできた氷が、その下の水を熱的に遮断して、上を吹く冷たい風から守り、冬でも凍らないようにしています。水中生物はそのおかげで、池の表面は凍っているのに、液体の中で生き延びることができます。もし氷の方が重かったら、池は下から凍っていくことになるので、水中生物は全滅してしまいます。この密度の気まぐれさも、水分子H2Oが分子間で水素結合を形成して、固体状態では正四面体状に連続する隙間の多い結晶構造を作るためです。海に浮かぶ氷山は、水素結合の強さの象徴なのです。実際にあのタイタニック号を破滅させたのは、水素結合の強靭さでした。
図.19 氷は、水素結合によって隙間の多い結晶構造を作るので、液体よりも密度が小さくなる
また、水H2Oは優れた溶剤にもなります。水分子H2Oは、水素Hと酸素Oの電気陰性度の違いから、水素-酸素結合においては、酸素原子側が電気的に負、水素原子側が正となり、局所的に電気双極子を作っています。このため、水H2Oは極性の強い分子であり、食塩NaClや硝酸カリウムKNO3などのイオン結合性の物質を溶解させます。エタノールC2H5OHとの間では、互いに水素結合を作れるので容易に混合し、ワインやビールなどのお酒ができます。
図.20 ワインのアルコール度数は、7〜14%程度である
(iv) 過酸化水素H2O2
過酸化水素H2O2は、常温常圧では、無色で粘性のある液体です。水に溶けやすく、わずかにオゾンO3に似た臭いがします。高濃度の水溶液は腐食性を持ち、皮膚を侵すので有害です。しかし、2.5〜3.5%の過酸化水素H2O2は、医療用の外用消毒剤として利用され、「オキシドール」と呼ばれています。オキシドールは、かつては殺菌・消毒剤として、各家庭に常備されている薬品の1つでした。
過酸化水素H2O2は、分子内に切れやすい酸素-酸素結合を持っているために、不安定で反応性に富む物質です。フッ素F2やオゾンO3などに次いで、強力な酸化力を持つ酸化剤ですが、過マンガン酸カリウムKMnO4や二クロム酸カリウムK2Cr2O7などに対しては還元剤として働きます (酸化還元を参照)。
(酸化剤) H2O2 + 2H+ + 2e- → 2H2O
(還元剤) H2O2 → 2H+ + O2 + 2e-
また、過酸化水素H2O2に二酸化マンガンMnO2などの触媒を加えると、自己酸化還元反応を起こして分解します。この反応では、2分子の過酸化水素H2O2が、酸化剤あるいは還元剤として反応しています。触媒としては、その他に塩化鉄(III) FeCl3が用いられることもあります。過酸化水素H2O2の分解反応では、濃度が30%のものに触媒を加えると、大爆発を起こすことがあるので注意が必要です。1999年に東京渋谷の首都高速道路上で、タンクローリーが爆発した事故の原因は、直前に塩化鉄(III) FeCl3水溶液を運んだタンクで、濃度30%の過酸化水素H2O2を運んだことにありました。
(酸化剤・還元剤) 2H2O2 → 2H2O + O2
(3) 硫黄
(i) 硫黄S
「硫黄(sulfur)」は、ラテン語の「sulpur(硫黄)」に由来する元素です。硫黄Sを指す接頭語の「チオ(thio)」は、ギリシア語の「theion(硫黄)」に起源があります。単体は火山の噴出口などから黄色の結晶として産出するため、古代から知られていました。鉱石の成分元素として、地殻中に単体や硫化物、硫酸塩の形で含まれる他、海水中にも硫酸イオンSO42- の形で存在しています。硫化物は温泉水に溶けており、漂白作用があって、色白になるとされます。温泉から出てきた硫黄Sの沈殿物は、温泉地では「湯の花」と呼ばれて、水虫などの皮膚病に効くといわれています。
図.21 湯の花には、硫黄S・カルシウムCa・アルミニウムAl・鉄Fe・ケイ素Siなど様々な元素が含まれる
昔は、単体の硫黄Sを人間の手で掘り出していました。北海道には、1970年頃まで硫黄鉱山がいくつも存在していました。しかし、世界的にも急速に硫黄鉱山は消滅したといえます。それは、石油の精製工程の脱硫によって生じる単体の硫黄Sが、ふんだんに手に入るようになったからです。原油には、その質量の4%前後の硫黄Sが含まれているので、石油の精製量の多い国が、硫黄Sの産出量の多い国になりました。
図.22 世界の硫黄生産量の推移
硫黄Sの単体には、「斜方硫黄」・「単斜硫黄」・「ゴム状硫黄」などの同素体があります。室温では、黄色塊状の斜方硫黄が熱力学的に最も安定で、天然に産出される硫黄Sはすべて斜方硫黄です。斜方硫黄を120℃に加熱して融解させたあと、空気中で放冷すると、黄色針状の単斜硫黄が得られます。さらに、250℃に加熱した液体硫黄を冷水に注いで急冷すると、弾性のあるゴム状硫黄が得られます。ただし、単斜硫黄もゴム状硫黄も、室温で長時間放置しておくと、およそ数日後には安定な斜方硫黄に変化します。次の表.2のように、斜方硫黄と単斜硫黄は、王冠状の環状分子S8からなり、水には溶けません。しかし、二硫化炭素CS2にはよく溶け、ベンゼンおよびトルエンにも少量溶けます。ゴム状硫黄は、多数の硫黄原子が次々に結合した長い鎖状分子Sx(xの値は数十万に及ぶこともある)からなり、二硫化炭素CS2には溶けにくいです。
表.2 硫黄Sの同素体
名称 |
斜方硫黄 |
単斜硫黄 |
ゴム状硫黄 |
分子式 |
S8(環状分子) |
S8(環状分子) |
Sx(鎖状分子) |
構造 |
|
|
|
色・形 |
黄色・塊状 |
淡黄色・針状 |
黄色〜褐色・ゴム状 |
融点 |
113℃ |
119℃ |
− |
溶解性 |
CS2に溶ける |
CS2に溶ける |
CS2に溶けない |
ちなみに、ゴム状硫黄の色は、教科書でも長らく「褐色」であるとされてきましたが、2009年に山形県鶴岡工業専門学校の17歳の少年が、実験によってこれが誤りであることを指摘し、教科書が書き換えられるという一件がありました。純度99%の斜方硫黄をもとにゴム状硫黄を作ってみたところ、教科書通り褐色のものが得られました。しかし、純度99.5%の斜方硫黄から同様にゴム状硫黄を作ってみたところ、教科書とは異なる「黄色」のものが得られたというのです。
それまでは、大学入試でも「褐色」が正解とされており、当たり前のように信じられていました。しかしながら、科学に「絶対」はなく、科学的であるということは、すなわち反証可能性があるということです。当たり前のように信じられていることの中にも、誤りに気付いていないだけで、本当は間違っていることがあるかもしれません。この一件は、少年の科学的な洞察力が呼んだ、見事な発見であったといえます。
図.23 黄色のゴム状硫黄(左)と不純物のために褐色になったゴム状硫黄(右)
硫黄Sの単体は、分子式ではS8(斜方硫黄・単斜硫黄)あるいはSx(ゴム状硫黄)と表しますが、基本的にはどれも組成式のSで表します。硫黄Sは、同族である酸素O2と同様に反応性が高く、多くの金属および非金属と直接化合して、硫化物を作ります。特に銀Agや銅Cuとは、接触により室温でも簡単に反応して、黒色の硫化銀(I) Ag2Sおよび硫化銅(II) CuSを生成します。錬金術の時代においては、「あらゆる金属は硫黄と水銀によって作られる」や「硫黄と水銀を完全な比率にすれば金が得られる」と考えられており、重要な物質と見なされていました。
Fe + S → FeS
2Ag + S → Ag2S
また、硫黄Sの単体は、どの同素体も燃えやすい性質があり、空気中で燃焼させれば、青い炎出して二酸化硫黄SO2になります。古代ローマ時代では、硫黄Sを燃やして出る二酸化硫黄SO2で、ワイン樽をいぶして微生物の汚染から守る工夫がされており、その後も医薬や火薬として用いられていたという記録が残っています。
S + O2 → SO2
(ii) 硫化水素H2S
硫化水素H2Sは、火山性ガスや温泉(硫黄泉)に含まれ、タンパク質の腐敗によっても発生する無色の気体です。温泉地で出会う「イオウ臭」といわれているものは、正確には硫黄Sの単体ではなく、硫化水素H2Sの臭いです。水によく溶けて弱酸性を示し、独特の腐卵臭があり、目や皮膚を刺激する有毒な気体です。低濃度では、風情のある温泉地の香りを呈しますが、高濃度では、吸入して即座に意識を失うほどの猛毒です。体内に吸収されると、ミトコンドリアの中にあるチトクロムオキシダーゼという呼吸に関わる酵素の働きが阻害され、酸素要求量の高い臓器に障害をきたします。その代表的な臓器が、中枢神経や心臓です。下水道の硫化水素を吸入したことで、心筋が壊死して死亡した例も報告されています。
表.3 硫化水素H2Sの中毒症状
硫化水素濃度 |
症状 |
0.05〜0.1ppm |
独特の腐卵臭を感じる |
1ppm |
労働安全衛生法の作業環境評価基準 |
10〜50ppm |
目の粘膜が損傷する |
50〜150ppm |
嗅覚脱出が起こり、独特の腐卵臭を感じなくなる |
150〜300ppm |
流涙、結膜炎、角膜混濁、鼻炎、気管支炎、肺水腫 |
500ppm以上 |
意識低下、昏倒、呼吸麻痺などで死亡 |
栃木県那須郡那須町の那須温泉には、触れると災いがあるといわれる「殺生石」という溶岩があります。殺生石の付近一帯からは、硫化水素H2Sや二酸化硫黄SO2などの有毒な火山性ガスが絶えず噴出しています。有毒なガスで倒れる鳥獣や人間を見て、昔の人々は「生き物を殺す石」だと考えたのでしょう。かの松尾芭蕉もこの地を訪れ、「おくのほそ道」にその様子が記され、「石の香りや 夏草赤く 露暑し」と詠みました。現在では、一帯は「殺生石園地」と呼ばれ、観光客が多く訪れる名所となっています。ただし、ガスの噴出量が多いときは、立ち入りが規制されています。なお、2022年3月5日に、殺生石が二つに割れていることが確認されました。割れる数年前よりヒビが確認されていたため、自然に割れた可能性が高いと思われています。
図.24 昔の人々は、殺生石を「生き物を殺す石」だと信じていた(写真は割れる前のもの)
硫化水素H2Sの人為的な発生源には、石油化学工業があります。また、下水処理場やゴミ処理場などにおいても、硫酸塩などの硫黄化合物が嫌気性細菌によって還元されて、硫化水素H2Sが発生します。おならの臭い成分としても、若干含まれています。ゆで卵を割ると独特な臭いがしますが、それは硫化水素H2Sによる腐卵臭です。卵を固くゆで過ぎると、黄身の表面が黒くなりますが、それは鉄分と化合してできた硫化鉄(II) FeSが主成分です。それを剥がして試験管に入れ、希塩酸HClまたは希硫酸H2SO4を注ぐと、硫化水素H2Sが発生します。硫化水素H2Sは水に溶けやすいので、実験室で発生させる場合は下方置換で捕集します。
このときに乾燥した硫化水素H2Sを得るには、十酸化四リンP4O10などの酸性乾燥剤や塩化カルシウムCaCl2などの中性乾燥剤の中を通して、水分を除きます。ソーダ石灰(CaO+NaOH)などの塩基性乾燥剤は、硫化水素H2Sと中和反応を起こすので不適です。また、濃硫酸H2SO4は代表的な酸性乾燥剤ですが、硫化水素H2Sは強い還元性を持つため、濃硫酸H2SO4と酸化還元反応を起こします。そのため、濃硫酸H2SO4は乾燥には不適です。
FeS + 2HCl → FeCl2 + H2S
FeS + H2SO4 → FeSO4 + H2S
2008年に、硫黄Sを主原料とする家庭用温泉入浴剤に塩酸HClを含むトイレ洗剤を加えて、閉鎖的な環境で硫化水素H2Sを発生させ、それを自殺に利用するという事件が多く発生したことがありました。インターネット上で「簡単に美しく死ねる」といった主旨の書き込みがあったことから、硫化水素H2Sによる自殺が急増したらしいです。1%の硫化水素H2Sを含む空気を数回吸えば、命に関わります。この煽りで、創業100年を迎えていた老舗の製造会社「武藤錠製薬」が、主力商品の温泉入浴剤「ムトウハップ」を生産中止にしました。実際に自殺死体を見た人によると、「極めて強い苦悶の表情を浮かべ、皮膚は緑色に変化していた」といいます。決して、安易に美しく死ねる方法ではありません。しかも、たとえ命が助かったとしても、深刻な脳障害が後遺症として残ることになります。また、乱用者本人のみならず、家族や救助者が巻き添えにあり、重傷を負ったり、重篤な場合は死亡したりするなどの社会問題になりました。硫化水素H2Sは、かなり恐ろしい毒ガスなのです。
図.25 ムトウハップは人気商品であったが、自殺への使用が多発して社会問題となった
また、硫化水素H2Sは、多くの重金属イオンと反応し、特有の色を持つ硫化物の沈殿を生じます。例えば、マンガン(II)イオンMn2+ 、ニッケル(II)イオンNi2+、銅(II)イオンCu2+、亜鉛(II)イオンZn2+、カドミウム(II)イオンCd2+、鉛(II)イオンPb2+ などの金属イオンを含む中性水溶液に硫化水素H2Sを通じると、これらの硫化物が沈殿します。ただし、水溶液が酸性であれば、溶解度の大きいマンガン(II)イオンMn2+ 、ニッケル(II)イオンNi2+、亜鉛(II)イオンZn2+ が溶け出してきます。これは、酸性が強くなる([H+]が大きくなる)と、次の平衡から分かるように、水溶液中の硫化物イオンS2- の濃度が減少して、沈殿を形成しにくくなるからです(無機化学(沈殿生成反応)を参照)。
表.4 金属硫化物の溶解度はpHによって変化する
沈殿しない |
Li+、K+、Ca2+、Na+、Mg2+、※Al3+ |
中性〜塩基性で沈殿する |
Zn2+、Fe2+、Ni2+、(Mn2+) |
どんな液性でも沈殿する |
Sn2+、Pb2+、Cu2+、Hg2+、Ag+、(Cd2+) |
※ 塩基性条件ならAl2S3が加水分解して、Al(OH)3の白色沈殿を生じる
硫化水素H2Sは、還元剤としても働いて、二酸化硫黄SO2やヨウ素I2を還元します。例えば、硫化水素H2Sを溶かした水溶液に、二酸化硫黄SO2を通じると、コロイド粒子状の硫黄Sが析出して、溶液が白濁します。火山性ガスには、二酸化硫黄SO2と硫化水素H2Sの両方が含まれているので、火山地帯の噴気孔付近では、この反応が自然に起こって、天然の硫黄Sが析出していることがあります。実験室では、この反応を利用して、硫化水素H2Sや二酸化硫黄SO2の検出をすることができます。
SO2 + 2H2S → 2H2O + 3S
I2 + H2S → 2HI + S
図.26 硫化水素H2Sと二酸化硫黄SO2の反応
(iii) 二酸化硫黄SO2
二酸化硫黄SO2は、刺激臭を有する無色の気体で、「亜硫酸ガス」の別名があります。火山活動や工業活動などで、大量に排出されている物質であり、酸性雨やぜん息の原因となって、環境破壊や自動車公害を引き起こしています。石炭や石油は、多量の硫黄化合物を含んでおり、この硫黄化合物が燃焼することで発生します。実験室では、銅Cuに濃硫酸H2SO4を加えて加熱するか、亜硫酸ナトリウムNa2SO3に希硫酸H2SO4を加えると発生し、水に溶けやすいので、下方置換で捕集します。
Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + SO2 + 2H2O
Na2SO3 + H2SO4 → Na2SO4 + SO2 + H2O
二酸化硫黄SO2は、人間にとって害しかない物質のように思えますが、逆に「大気中に二酸化硫黄SO2をばら撒いて、地球温暖化を防止しよう」という地球工学の研究があります。きっかけとなったのは、1991年6月に起こったフィリピンのルソン島西側にあるピナトゥボ山の大噴火です。噴火は9時間にも渡り、ここ100年ほどの間に起きた噴火の中では最大規模でした。噴煙は34 kmの高さまで上昇し、噴火前に1,745 mあった標高は、噴火後には1,486 mまで低くなりました。噴火が終わるまでに、約2,000万tの二酸化硫黄SO2が放出されたと推定され、二酸化硫黄SO2は対流圏を突き抜けて、成層圏まで達しました。
図.27 1991年に起こったピナトゥボ山の噴火は、20世紀における最大規模の大噴火であった
この噴火によって死者847名、行方不明者23名、被害者総数120万人に達する多大な被害を出しましたが、思わぬことが起こりました。成層圏で酸化された二酸化硫黄SO2は、水蒸気を吸収して「硫酸H2SO4のエアロゾル」となり、噴火から1年をかけて成層圏をゆっくりと拡散していきました。「エアロゾル」というのは、空気中を浮遊している液体もしくは固体の微粒子のことで、身近なものでは煙や霧などがエアロゾルです。成層圏へのエアロゾルの大量放出の結果、地表に達する太陽光が最大で5%も減少しました。エアロゾルが2年に渡って日光を遮り、地球の平均気温を0.5℃も下げたのです。たった1度の噴火で、100年かけて積み上がった地球の温暖化が、一時的ではあるにしろ、押し戻されてしまったのです。こうしたピナトゥボ級の大噴火が、数年に1度のペースで発生すれば、「21世紀の間に起きると予想されている人為的な地球温暖化の大部分が相殺されるだろう」という研究者までいます。
図.28 ピナトゥボ山の噴火により、地球の平均気温が約0.5℃下がった
地球工学の研究によると、成層圏で二酸化硫黄SO2を1年で10万tばら撒けば、地球温暖化を効果的に抑制できるといいます。10万tの二酸化硫黄SO2というと、膨大な量のように思えます。しかし、この量は、現在の地球上における二酸化硫黄SO2排出量のたった0.05%です。大事なのは、二酸化硫黄SO2を「成層圏」でばら撒くことです。「対流圏」にばら撒いた場合では、二酸化硫黄SO2は1週間ぐらいしか留まらず、酸性雨などの原因となるので害悪です。しかし、「成層圏」にばら撒いた場合では、1年以上も留まって、温暖化を抑制するのです。
このような地球工学の考えは、シミュレーションが大変難しく、何が起こるかほとんど予測できないという面があります。しかし、「二酸化硫黄SO2が地球の平均気温を下げた」という事実は確かなため、「二酸化硫黄SO2の雲」は、案外有力な方法なのかもしれません。技術的な問題は山積みですが、火力発電所の煙突を成層圏まで延長してばら撒くという、二酸化硫黄SO2の排出量を増やさない方法も考えられており、現在注目が集まっています(地球温暖化の科学を参照)。
図.29 二酸化硫黄SO2による寒冷化のメカニズム
二酸化硫黄SO2は、水H2Oと反応して亜硫酸H2SO3となり、水溶液中で弱酸性を示します。ただし、亜硫酸H2SO3分子は、不安定なため純粋な物質として単離することはできません。実際には水溶液中で、二酸化硫黄SO2をいくつかの水分子が取り囲み、次のような平衡により、弱い酸性を示すと考えられています。二酸化硫黄SO2は、酸性雨に含まれる物質の1つです。
SO2 + 2H2O ⇄ H3O+ + HSO3-
HSO3- + H2O ⇄ H3O+ + SO32-
二酸化硫黄SO2の硫黄原子は、+4の酸化数を有するので、酸化剤にも還元剤にもなり得ます。しかし、単体の硫黄Sになるより、硫酸イオンSO42- に変化する反応の方が起こりやすいので、どちらかというと酸化剤よりも還元剤として働きやすいです。水H2Oの存在下で、二酸化硫黄SO2は還元的な脱色作用を示すため、絹や羊毛をはじめとする各種繊維や紙などの漂白剤として用いられます。また、ブドウの果汁を酢に変えるイースト菌や雑菌の成長を抑えたり、酸化を防いだりする目的で、ワインの製造にも使われています。白ワインの場合は、淡黄色の色素の酸化が防止できるように、赤ワインよりも多く使われています。ワイン製造においては、二酸化硫黄SO2は不可欠な物質であり、古代ローマの時代から、樽の中で硫黄Sを燃やすことが行われていたというのだから驚きです。なお、二酸化硫黄SO2は、硫化水素H2Sなどのような還元性の強い物質に対しては、酸化剤として働きます。
(還元剤) SO2 + 2H2O → SO42- + 4H+ + 2e-
(酸化剤) SO2 + 4H+ + 4e- → S + 2H2O
図.30 二酸化硫黄SO2による還元的な脱色作用
(iv) 三酸化硫黄SO3
三酸化硫黄SO3は、刺激臭を有する無色の液体で、「無水硫酸」とも呼ばれます。水H2Oと反応すると、硫酸H2SO4になるため、工業的に大量生産されています。三酸化硫黄SO3は、二酸化硫黄SO2と同様に、酸性雨の原因物質の1つです。なお、過剰の三酸化硫黄SO3を濃硫酸H2SO4に溶かし込んだものは、「発煙硫酸(fuming sulfuric acid:H2SO4・nSO3)」と呼ばれます。発煙硫酸の名称は、三酸化硫黄SO3の蒸気と空気中の水分によって、常に白煙が生じていることに由来しています。
SO3 + H2O → H2SO4
H2SO4 + nSO3 ⇄ H2SO4・nSO3
図.31 白煙を発生させる発煙硫酸H2SO4・nSO3
(v) 硫酸H2SO4
硫酸H2SO4は、実験室的にも工業的にも、重要な化合物の1つです。私たちの生活に直接用いるものではありませんが、間接的にはすべての産業に関係している物質です。衣食住に関するほとんどの製品は、製造過程中に硫酸H2SO4を用いて作られていると考えていいでしょう。硫酸H2SO4の製造量は、その国の化学工業の規模を表すものとして、統計集の重要な項目となっています。一般に「硫酸」という名称は、硫酸H2SO4の水溶液(希硫酸や濃硫酸など)を指す場合が多いのですが、硫酸分子そのものを指す場合にも用いられます。純粋な硫酸H2SO4は無色の液体で、分子間に水素結合が形成されるために、粘性が高いです。
表.5 各国の硫酸の製造量(2000年)
順位 |
国 |
製造量 |
1位 |
中国 |
2,400万t |
2位 |
アメリカ合衆国 |
960万t |
3位 |
ロシア |
830万t |
4位 |
日本 |
710万t |
5位 |
インド |
550万t |
硫酸H2SO4を初めて合成したのは、8世紀のイスラムの錬金術師だと考えられています。その方法は、「緑礬(りょくばん)」という硫酸鉄(II)七水和物FeSO4・7H2Oが主成分の水溶性鉱物を乾留して、追い出される硫酸H2SO4の蒸気を集めるというものです。また、12世紀には、天然の硫酸塩であるミョウバンAlK(SO4)2・12H2Oや硫酸銅(II)五水和物CuSO4・5H2Oを乾留して、硫酸H2SO4を集める方法が記録として残っています。天然の硫酸銅(II)五水和物CuSO4・5H2Oの鉱物は「胆礬(たんばん)」といい、青いガラスのような結晶です。ガラスのことをラテン語で「Vitrum」というので、硫酸銅(II)五水和物CuSO4・5H2Oは「blue vitriol」と呼ばれていました。そして、ここから得られる硫酸H2SO4は、油のような粘り気と強い腐食性を持ち、「vitriol oil」と呼んでいました。英語で「vitriolic(痛烈な)」という語がありますが、これは硫酸H2SO4の強い腐食性に由来する言葉です。
CuSO4・5H2O → CuO + H2SO4 + 4H2O
もっと簡単に硫酸H2SO4を作るには、三酸化硫黄SO3を水H2Oと反応させればいいのですが、硫黄Sを燃焼させても二酸化硫黄SO2になるだけで、三酸化硫黄SO3はほとんど生成しません。この理由は、三酸化硫黄SO3が生成する反応の活性化エネルギーが非常に大きいからです。そのため、二酸化硫黄SO2から硫酸H2SO4を製造するには、種々の工夫が必要になります。工業的には、五酸化二バナジウムV2O5を主成分とした触媒を用いて、400〜600℃で二酸化硫黄SO2を空気酸化し、生じた三酸化硫黄SO3を水H2Oと反応させて作ります。このような硫酸H2SO4の工業的製法を、「接触法(contact process)」といいます。接触法は、20世紀になってから確立された工業的製法で、現在ではこの方法が標準的な製法となっています(無機工業化学を参照)。
2SO2 + O2 → 2SO3
SO3 + H2O → H2SO4
硫酸製造で必要な二酸化硫黄SO2は、石油精製の際に得られる硫黄Sを燃焼させて作ります。二酸化硫黄SO2は、かつては黄鉄鉱FeS2を燃焼させて作っていたこともありましたが、現在ではこの製法は衰退しています。また、三酸化硫黄SO3を直接水に吸収させようとすると、大きな水和熱と溶解熱が発生して、水H2Oが蒸発して霧状になってしまうので上手くいきません。そのため、実際には濃硫酸H2SO4に多量の三酸化硫黄SO3を吸収させて、いったん発煙硫酸H2SO4・nSO3とし、これを希硫酸H2SO4と混合することで、濃硫酸H2SO4を生産しています。
図.32 接触法
「濃硫酸」といえば、教科書的には「市販のものは約96〜98%(18 mol/L)」とされ、およそ96〜98%以上の濃度の硫酸を指すことが多いようです。しかし、大雑把に90%程度以上の濃度のものを「濃硫酸」、それよりもずっと低い濃度のものを「希硫酸」と考えて差し支えないでしょう。ちなみに、硫酸協会規格によれば、希硫酸は濃度が27〜50%程度のものを指し、濃度が60〜80%程度のものは薄硫酸と呼ぶようです。
表.6 硫酸協会規格
種類 |
希硫酸 |
薄硫酸 |
濃硫酸 |
発煙硫酸 |
濃度 |
27〜50%H2SO4 |
60〜80%H2SO4 |
90〜100%H2SO4 |
15〜35%SO3 |
濃硫酸H2SO4は、吸湿性が非常に強く、乾燥剤になります。また、濃硫酸H2SO4は、有機化合物中の水素原子と酸素原子を2:1の比で、つまり水分子H2Oとして取り去る脱水作用を持ちます。さらに、濃硫酸H2SO4は不揮発性であり、揮発性の酸(塩酸HCl・硝酸HNO3など)の塩に加えて加熱すると、揮発性の酸が遊離します。加熱した濃硫酸H2SO4は、酸化作用が強く、イオン化傾向の小さい銅Cuや銀Agなども酸化して、二酸化硫黄SO2を発生させます。濃硫酸H2SO4は強酸で脱水作用があるため、皮膚にかかると火傷する危険性があります。2015年には、群馬県高崎市で買い物をしていた23歳の女性に、無職の男が濃硫酸H2SO4をかけるという傷害事件が起こりました。2021年にも、東京都港区白金で22歳の男性が白金高輪駅の改札から地上出口に上がるエスカレーター付近で、大学時代に同じサークルだった男に濃硫酸H2SO4をかけられるという事件が発生しています。
表.7 濃硫酸H2SO4の性質
不揮発性 |
NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl↑ NaNO3 + H2SO4 → NaHSO4 + HNO3↑ |
吸湿性 |
乾燥剤(塩基性気体NH3や還元性気体H2Sは不適) |
脱水作用 |
HCOOH → H2O + CO↑ C2H5OH → H2O + C2H4↑ C6H12O6 → 6H2O + 6C |
酸化作用 |
Cu + 2H2SO4 → CuSO4 + 2H2O + SO2↑ 2Ag + 2H2SO4 → Ag2SO4 + 2H2O + SO2↑ |
図.33 濃硫酸H2SO4の性質
濃硫酸H2SO4を水に溶かすと、多量の熱を発生させて、希硫酸H2SO4となります。このとき、必ず撹拌しながら、多量の水に少しずつ濃硫酸H2SO4を加えていかなければなりません。もし濃硫酸H2SO4に水を加えてしまった場合は、水蒸気爆発が起こって大変危険です。この現象が起こる理由は、密度の大きな硫酸H2SO4には、粘性が小さく軽い水が混じらず、硫酸H2SO4との界面で発生した希釈熱が、少ない水を沸点以上に加熱するからです。一方、多量の水に少しずつ濃硫酸H2SO4を加えた場合は、密度の大きい硫酸H2SO4が、水の下に潜り込むように溶けるので、均一に混合します。
H2SO4 + aq = H2SO4aq + 95.3 kJ
希硫酸H2SO4では、その系のほとんどが水分子なので、硫酸分子H2SO4は、水中ではほとんど完全に電離して強酸性を示します。希硫酸H2SO4は、水素H2よりイオン化傾向の小さい金属を溶かし、水素H2を発生させます。また、強酸性を示す希硫酸H2SO4を、亜硫酸塩や亜硫酸水素塩、炭酸塩、酢酸塩などの弱酸の塩に加えると、弱酸が遊離します。例えば、炭酸ナトリウムNa2CO3に希硫酸H2SO4を反応させると二酸化炭素CO2が遊離し、酢酸ナトリウムCH3COONaに希硫酸H2SO4を反応させると酢酸CH3COOHが遊離します。
Na2CO3 + H2SO4 → Na2SO4 + H2O + CO2
2CH3COONa + H2SO4 → Na2SO4 + 2CH3COOH
(vi) チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3
チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3は、硫酸ナトリウムNa2SO4の酸素原子の1つが、硫黄原子に置き換わった構造を持つ化合物です。水溶液は、ハロゲン化銀の結晶を溶解する性質を利用して、写真の定着剤として使用されます。このときの生成物は、銀イオン錯塩であるビス(チオスルファト)銀(I)酸ナトリウムNa3[Ag(S2O3)2]です。
2Na2S2O3 + AgX → Na3[Ag(S2O3)2] + NaX
また、チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3には還元作用があり、テトラチオン酸ナトリウムNa2S4O6に変化します。特にヨウ素I2との反応は、ヨウ素滴定の基礎になります。ヨウ素I2の入ったコニカルビーカーに、チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3水溶液をビュレットから滴下し、ヨウ素I2の物質量を定量的に求めることで、間接的にその他の酸化剤や還元剤の物質量を求めることができるのです。
I2 + 2Na2S2O3 → Na2S4O6 + 2NaI
図.34 ヨウ素滴定では、ヨウ素I2によるヨウ素デンプン反応の青紫色の呈色が消えたときが終点となる
例えば、酸化剤の物質量は、ヨウ化物イオンI- を酸化剤に作用させ、生じたヨウ素I2の物質量を滴定で求めることにより、酸化剤の物質量が分かります。また、還元剤の物質量は、物質量既知のヨウ素I2に還元剤を作用させ、残ったヨウ素I2の物質量を滴定で求めることにより、還元剤の物質量が分かります(酸化還元を参照)。
・参考文献
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2) 倉原優「本当にあった医学論文2」中外医学社(2015年発行)
3) 元素学たん著/左巻健男編『身近にあふれる「元素」が3時間でわかる本』明日香出版社(2021年発行)
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6) 左巻健男「面白くて眠れなくなる元素」PHP研究所(2016年発行)
7) ジョー・シュワルツ「シュワルツ博士の化学はこんなに面白い」主婦の友社(2002年発行)
8) スティーヴン・D・レヴィット著/スティーヴン・J・ダブナー著/望月衛訳「超ヤバい経済学」東洋経済新報社(2010年発行)
9) セオドア・グレイ「世界で一番美しい元素図巻」創元社(2011年発行)
10) 日本博学倶楽部『[決定版]「科学の謎」未解決ファイル』PHP研究所(2013年発行)
11) F・アッシュクロフト 著/矢葉野薫 訳「人間はどこまで耐えられるのか」河出書房新社(2008年発行)
12) Peter W. Atkins著/千原秀昭・稲葉章訳「分子と人間」東京化学同人(1993年発行)
13) 平尾一之/田中勝久/中平敦「無機化学」東京化学同人(2013年発行)
14) 村上雅彦「1995年ノーベル化学賞:地球を救った理論―成層圏オゾンの生成・分解機構の解明―」化学と教育67巻7号(2019年)