・ガンの科学


【目次】

(1) ガンは国民病

(2) ガンの原因は何?

(i)「ガン遺伝子」と「ガン抑制遺伝子」

(ii) ガン化を防ぐ様々な仕組み

(3) ガンは遺伝するのか?

(4) 抗ガン剤の誕生

(i) 世界初の抗ガン剤

(ii) 様々な抗ガン剤

(iii) 現在の抗ガン剤治療

(5) 分子標的薬とは?

(6) ガン免疫療法とは?

(7) ガンの臭いでガン診断


(1) ガンは国民病

 どのような人であれ、人生の最後には必ず死が訪れます。人の亡くなり方も様々で、戦乱の時代には「戦死」する人が増えますし、衛生環境の悪い国では「感染症」での落命が多くなります。人々がどのような原因で亡くなっているのかは、その国やその時代の姿を映す鏡であるといえます。日本では、1980年までは「脳血管疾患」が死因の第1位でしたが、1981年からは長らく「ガン」が死因の第1位となっています。今や国民の2人に1人がガンにかかり、3人に1人がガンで亡くなっていますから、これはもう「国民病」といっても過言ではありません。近年では、日本以外の多くの先進国でも、ガンは死因のトップを占めています。ガンによる死亡者は増加し続けており、世界保健機関(WHO)によれば、2030年には1,140万人がガンで死亡すると予測されています。

 

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.1  日本人の死亡原因の比率(平成29年人口動態統計を基に作成)

 

それでは、昔はどうだったのでしょうか?実は、古代の記録にガンはほとんど登場しません。発症例自体が少なく、原因などは謎に包まれていたのです。古代ローマ帝国時代の名医ガレノスは、「体液のバランスの乱れがガンを引き起こす」と説いていました。紀元前1,500年頃に書かれた古代エジプトのパピルスにも、乳ガンらしき記述がありますが、その他の肺ガンや肝臓ガンなどに関する記述は、歴史を遡ってもほとんど見付かりません。これは、多くのガンが体内奥深くの臓器で発生し、外から見ても分かりにくいことも一因ではありますが、実際にかつてはガンになる人は少なかったのです。紀元前400年頃には、ヒポクラテスがガンを「carcinos」や「carcinoma」などと呼びました。どちらも「蟹」を意味する言葉なのは、腫瘍がまるで蟹の甲羅から脚が伸びるように浸潤することが多いからです。「ガンによる鋭い痛みが、蟹のハサミで挟まれたように感じられるから」という説もあります。イタリアのヴェローナで、1760年から1839年までのガンによる死者を調べた統計がありますが、ガンによる死者は100人に1人もいませんでした。それが今や、3人に1人がガンで亡くなるのですから、ガンが急増したのは、せいぜいこの百数十年のことなのです。

かくもガンが増えたのは、現代の環境や食品が悪いせいでも、医療が充実していないからでもありません。むしろその逆で、日本を含めた先進国の環境や医療が優れているからこそ、ガンで亡くなる人が増えているのです。言い換えれば、ガン以外の病気ではなかなか死ななくなったからこそ、ガンで亡くなる人が増えてきたということです。かつて多かった結核などの感染症、脳卒中などの脳血管疾患は、医薬や衛生環境などの改善で駆逐されていき、人々は長い人生を楽しめるようになりました。明治から大正期には40歳代だった日本人の平均寿命は、今や80歳を大きく超えています。1963年にわずか153人であった日本の100歳以上の人口は、2019年には7万人を突破しました。これほど寿命が大いに延びた時代は、歴史上にありません。

 

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.2  100歳以上の人口と平均寿命の推移

 

ガンという病気は、高齢になって細胞の機能が低下するにつれて、かかりやすくなる傾向があります。例えば、30歳で乳ガンを発症する人は400人に1人ですが、70歳では9人に1人が乳ガンになります。年齢的には、いわゆる小児ガンが生じる4歳に小さなピークがありますが、55歳くらいからガンによる死亡率が急激に増加します。明治から大正期の40歳代で寿命を終えるような時代には、相対的にガンは少なかったのです。他の病気ではなかなか死ななくなった日本人は、最後にはどうしてもガンにたどり着き、そこで亡くなってしまうようになりました。そして1981年以来、ガンが死因のトップを占め続けているということは、他の病気に関しては随分と改善があったのに、ガンの治療に関しては40年近く画期的な進歩が見られなかったということでもあります。しかし、近年になってガンの治療は、大きく様変わりしつつあります。

 

.3  ガンの年齢階級別死亡率(2018年集計)

 

長らく「ガンの三大療法」と呼ばれているものに、「外科手術」・「放射線療法」・「化学療法」があります。ガン治療の原則は、「外科手術」です。早期胃ガンではほぼ100%、進行ガンでも比較的早期のものでは50%の5年生存率が得られます。ただし、外科手術では転移による再発を防ぐことが難しいです。「放射線療法」は、局所療法として行われ、食道ガンや咽頭ガンなどで良い結果が得られています。「化学療法」は、主として抗ガン剤を用いて、広範に広がったガンに対する治療法として有効です。しかし、放射線療法や化学療法では、重い副作用を生じることも少なくありません。ガンの治療は日進月歩で、最近では「ガン免疫療法」という治療法も注目されるようになりました。昭和の時代にいては、ガンは「死刑宣告」と同義でしたが、現在では一度かかったらおしまいの「不治病」というばかりではなくなってきているのです。

 

(2) ガンの原因は何?

(i)「ガン遺伝子」と「ガン抑制遺伝子」

 普通、病気にははっきりとした原因があるものです。例えば、「インフルエンザ」はインフルエンザウイルスに感染することが原因ですし、「偏頭痛」は頭部の血管が拡張し、神経を刺激することで起こります。しかしながら、「ガン」の原因ははっきりとしていません。塩分の摂り過ぎ、酒の飲み過ぎ、タバコの吸い過ぎ、太陽光線の浴び過ぎ、ウイルス感染、魚のコゲ、ある種の化学物質、野菜や果物の摂取不足、ガンになりやすい家系など、ほとんど共通点などありそうにないものたちが、「ガンの原因」として挙げられています。しかもこれらには、「ガンを引き起こす」という疫学的なエビデンスも存在しています。

例えば、ガンの原因としては、タバコがすべてのガンの3分の1に関係していると考えられており、肺ガンのみならず、咽頭ガンや食道ガン、膀胱ガンなどを引き起こします。食事内容などの生活習慣もガンの3分の1に関係していると考えられており、塩分濃度の高い食事と胃ガン、動物性脂肪摂取と大腸ガンなどに関連があるようです。その他、ガンの2割近くは、ピロリ菌やEBウイルスなどの細菌やウイルスの感染が原因になっています。

かといって、タバコを毎日ふかし、多量のお酒を飲んでいても、ガンにかからず長生きしている人もいます。一方で、お酒もタバコもやらない人が、ガンになることもあります。ガンを引き起こす原因が、必要条件にも十分条件にもなっていないという、ガンはどうにも不思議な病気なのです。東京大学の医学者である中川恵一は、これに関して「ガンの原因の3分の1は運、3分の1が喫煙、残りの3分の1はタバコ以外の生活習慣である」と述べています。

 

.4  タバコの煙には、発ガン性物質が含まれている

 

 ガンという病気は、DNAにある遺伝子に異常が生じることによって発症します。先述した「ガンの原因」の多くは、遺伝子を傷付けるもの、傷付く機会を増やすものなのです。人体を構成する細胞は37兆個あり、新陳代謝によって、体の中では絶えず古い細胞と新しい細胞が入れ替わっています。細胞分裂を促進するタンパク質を設計する遺伝子を「原ガン遺伝子」というのですが、この遺伝子が放射線やウイルスなどの影響で後天的に変異して、「異常に活性の高い細胞分裂促進遺伝子」が生まれることがあります。このような異常なタンパク質を設計するようになった遺伝子を、「ガン遺伝子」といいます。そして、細胞中の遺伝子が1回、あるいは何回か変異を起こした結果、生体の制御から外れて自律的に無限の細胞増殖をきたす状態になったものが「ガン」です。体の中でたった1個の細胞がガン化すると、それは2個、4個と次々に増殖し、留まることを知りません。

発生したガン組織が2倍に増えるのに要する時間は、13カ月といわれています。そして、成長して目に見える大きさのガンになるには、10年ほどの時間が必要になります。ガンという病気が、若いときには発症しにくく、年齢を重ねるに従って発症率が高まるのは、こうした理由によります。ガン細胞は間もなく周囲の組織に広がり、さらに血液やリンパ液に乗って他の臓器へたどり着き、そちらでも増殖を始めるようになります。これがガンの「転移」で、全身に転移したガン細胞は、急速に成長して臓器や器官を圧迫・破壊していき、ついにはその人間を殺してしまいます。転移の成立には、血液の性状やガン細胞の結合の程度など、種々の条件があります。ガン細胞が急速に増えて低酸素状態になると、転移が増えるという研究結果もあります。血液やリンパ液の他、消化管や尿路を介して転移することもあり、「ガンの転移はガン細胞が人体を舞台に演ずる芸術である」といっていた研究者もいるほどです。

 

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.5  ガンの名については、腫瘍が岩のようなので、岩を意味する「癌」の字があてられたという説が有力である

 

一方で、細胞分裂を抑制するタンパク質を設計する遺伝子も存在し、これを「ガン抑制遺伝子」といいます。細胞が増殖して塊となり、やがて他の臓器などに接触すると、ガン抑制遺伝子から「もうここまでで増殖を止めろ」というシグナルが出されます。このようなシグナルが出ると、増殖した細胞はそこまでで成長がストップします。これは、細胞の無制限な増殖を制御する仕組みの1つです。先程の原ガン遺伝子が細胞分裂における「アクセル」なら、ガン抑制遺伝子は「ブレーキ」といえるでしょう。

 また、染色体の末端には、「テロメア」という輪のような形をしている遺伝子があります。細胞が複製されると、染色体も複製されますが、新しく複製された染色体のテロメアは、末端の塩基部分が複製されないために、元の長さよりも短くなります。細胞分裂を繰り返してテロメアがどんどん短縮していくと、いずれテロメアは輪を作れなくなります。すると細胞は、これを「染色体に障害がある」と認識し、細胞分裂はそこで停止することになります。つまり、テロメアは「細胞分裂の回数券」のようなもので、1個の細胞が分裂して増えられる回数は、テロメアの長さによって決められているのです。76歳男性とその孫にあたる27歳男性のテロメアを調査したところ、76歳男性で76%27歳男性で40%が減少していたといいます細胞が分裂できる回数は、生物種ごとに異なりますが、ヒトでは約50回ほどです。テロメアは、老化した細胞がそれ以上分裂をしないように制御しているのです。

 

.6  テロメアは、染色体の末端に輪のような形で存在する

 

 ちなみに、人間だけでなく、他の生物にもテロメアは存在しますが、テロメアが存在しない生物もあります。例えば、大腸菌などの単細胞生物には、テロメアがありません。よって、大腸菌は無限の分裂能を持ち、何回でも細胞分裂が可能なのです。ということは、人間もテロメアがなければ、何回でも細胞分裂が可能になり、永遠の命を手に入れることができるようになるのでしょうか?しかし、テロメアが存在せずに、細胞が無秩序に分裂してしまうと、DNAのミスコピーが蓄積して、その細胞はガン化してしまいます。実際に多くのガン組織では、テロメアを伸長させる「テロメラーゼ」という酵素が発現しており、細胞分裂回数が著しく増加していることが分かっています。テロメアによって細胞分裂の回数が制限されているからこそ、ガン化が未然に防がれているのです。

1951年に子宮頸ガンで亡くなった30代の黒人女性ヘンリエッタ・ラックスの腫瘍病変から採取された「HeLa細胞」は、細胞の提供者である女性が亡くなったあとも、ずっとフラスコの中で生き続けています。未だに繁殖力旺盛で、若干劣悪な環境でも増殖を続け、彼女は世界中の研究室で断片として生きています。これまでに培養されたHeLa細胞は、推定で5,000tを超えるといわれています。この量は、日本が海外から1年間に輸入する全食料に匹敵します。とはいえ、「彼女」を示す唯一の印である遺伝子自体が、ガン化した影響で滅茶苦茶になっており、もはや元の遺伝子の性質を維持していないといいます。

 

.7  HeLa細胞のゲノム配列が解読されたが、中身はガンの影響でエラーだらけだった

 

(ii) ガン化を防ぐ様々な仕組み

もう1つガン化を防ぐ重要な仕組みとして、「アポトーシス」があります。これは、日本語で「プログラムされた細胞死」と訳されます。細胞は、自らの遺伝子に修復不可能なほどのダメージを受けたことを察知すると、「p53遺伝子」というガン抑制遺伝子が活性化します。すると、アポトーシスを誘導するために「p53タンパク質」が作られ、細胞は1時間とかからずに自ら生命活動を放棄して死んでしまいます。これによって、ほとんどの異常な細胞は取り除かれ、本格的なガン細胞に変化する前に芽を摘まれてしまいます。

p53遺伝子は、昆虫から哺乳類までの多くの生物が持つ代表的なガン抑制遺伝子です。アポトーシスと細胞分裂の抑制を制御していることから、「ゲノムの守護者」とも表現されています。p53遺伝子の異常が、ガン細胞において高頻度に認められることから、細胞がガン化するためには、複数のガン遺伝子とガン抑制遺伝子の変異が必要らしいことが判明してきました。例えば、肺ガンではタバコの煙に含まれる「ベンゾ[a]ピレン」という発ガン物質により、p53遺伝子の変異が起こっていることが知られています。また、p53遺伝子の機能を失わせたノックアウトマウスは、正常に生まれてくるにも関わらず、成長に伴って高頻度にガンを発生することも知られています。

 

.8  p53遺伝子の異常により、ガンが引き起こされる

 

ゾウのガン発生率はヒトよりも少ないことが知られていますが、201510月に「米国医師会雑誌」に掲載された論文において、ゾウがp53遺伝子をコードする遺伝子をヒトの19倍も多く持っていることが、ガン発生率に違いをもたらしているという研究成果が発表されました。現在では、アデノウイルスなどのベクターを用いて、ガン細胞へp53遺伝子を導入する「遺伝子療法」が注目されています。ベクターが運んだ遺伝子は、DNAの修復過程で、偶発的に相手のDNAに取り込まれるといいます。ただし、ウイルスの副作用がゼロとはいえず、遺伝子療法による死亡例も報告されているなど、課題も多くあります。

 

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.9  大きな体と長い寿命を持つにもかかわらず、ゾウがガンになる確率は驚くほど低い

 

 また、「免疫系」という防衛ラインもあります。免疫系は、外部から侵入したウイルスや細菌を「異物」と感知して攻撃する仕組みであり、通常は自分の細胞は攻撃しません。しかし、DNAのミスコピーが蓄積したガン細胞となると、免疫系はこれを異物として認識し、攻撃して除去してくれるのです。このような免疫系による攻撃を「免疫監視」といい、殺傷能力の高いキラーT細胞やNK細胞などが関わっています。一説によれば、人間の体の中には1日に5,000個ものガン細胞が生じていますが、これらがすべて免疫系によって排除されているため、発症はしません。この闘いの中で、取り逃したたった1個の細胞が、ガンへと成長していくということになります。

 私たちの体の中で、こうした数々の仕組みが正常に機能している限り、ガンは発症しません。しかし、正常な代謝過程の中でも、活性酸素の作用などでDNAの損傷は起こり、その頻度は1日に数万回から数十万回にも及びます。例えば、DNAの塩基の1つであるグアニンは、通常はシトシンと塩基対を作りますが、酸化されたグアニンは、アデニンと塩基対を作ってしまいます。つまり、DNAの複製時に配列が変化し、遺伝情報が変わってしまう訳です。また、DNAを複製するときには、1遺伝子当たりで100万分の1の確率でコピーミスが起こります。人間の細胞にあるDNA30億塩基対という長さですから、1回の細胞分裂で複数のコピーミスが発生することになります。

しかし、こうした異常を持ったDNAの多くは、「アポトーシス」や「免疫系」の働きにより、表に出る害がないまま終わるか、欠陥品として何らかの形で除去されています。生命は大切なDNAを守るため、こうした欠陥を除去・修復する仕組みをきちんと備えています。こうしたDNAを護る仕組みを解明したトマス・リンダール、ポール・モドリッチ、アジズ・サンジャルの3名は、2015年のノーベル化学賞を受賞しました。

 

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.10  私たちの体には、DNAの欠陥を除去・修復する機能が備わっている

 

 という訳で、タバコを吸ったり日光を多少浴びたりしても、すぐにガンになることはありません。ただし、日常的に発ガン物質を多く摂取し続ければ、ガンを発症する確率は少しずつ上がっていきます。かといって、発ガン性物質を全く摂らないようにしていれば、決してガンにならないという訳でもありません。ガンを発症する確率が、平均よりは下がるというだけです。正常なDNA複製の際にも、コピーミスは一定の確率で起こるからです。ガン予防には、生活習慣の改善は重要ではありますが、偶然の部分もやはり大きいのです。

 

(3) ガンは遺伝するのか?

 ガンは「遺伝子の病気」というと、多くの人はガンが遺伝するものだと思うかもしれませんが、それは少し間違っています。多くのガンは、子孫に伝わらない「体細胞」の遺伝子の後天的な変異が積み重なって生じたものなので、通常は遺伝しません。しかし、子孫に伝わっていく「生殖細胞」に、ガンを生じるような遺伝子の変異が受精前にすでに起こっていたら、「ガンのなりやすさ」が遺伝することになります。およそ16,000組の一卵性双生児の統計データを解析した研究によると、このような遺伝性のガンは、全体の8%ほどであるといわれています。つまり、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児といえども、両方が同じガンにかかるケースはまれであり、片方だけがかかるケースが圧倒的に多いということです。

 一卵性双生児の両方がかかるような代表的な遺伝性のガンには、「家族性大腸腺腫症」や「家族性乳ガン」があります。家族性大腸腺腫症においては、「APC」というガン抑制遺伝子の変異が遺伝することによって、大腸ガンを発症しやすくなります。数百から数万個のポリープが大腸に発生して、このポリープがガン化することによって、40歳では50%、60歳ではほぼ100%の患者に大腸ガンを発生します。また、家族性乳ガンの場合には、「BRCA1」もしくは「BRCA2」というガン抑制遺伝子の変異が遺伝することによって、乳ガンを発症しやすくなることが知られています。BRCA1BRCA2の変異を併せ持っている場合は、乳ガンの障害罹患率が80%以上にまで跳ね上がるというアメリカの研究もあります。したがって、これらの遺伝子の変異を検出することができれば、ガンになりやすい体質を診断して、ガンの早期発見・早期治療に役立てることができると考えられています。

 

.11  BRCA1の変異により、遺伝子不安定を生じ、乳ガンを引き起こしやすくなる

 

 2013年の5月には、アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーが、乳ガンのリスクを減らすために「予防的乳房切除」を選択したということで、当時話題になりました。「ニューヨーク・タイムズ」の記事によると、アンジェリーナはBRCA1遺伝子の異常により、将来的に乳ガンや卵巣ガンになる可能性が非常に高いということが判明しました。アンジェリーナの母親と叔母もこのBRCA1の異常でガンを発症し、若くして生命を落としていることから、発症前の段階で乳房切除を決意したといいます。その結果、乳ガンを発症するリスクが87%から5%に、卵巣ガンを発症するリスクが50%から同じく5%に減少したといわれています。もちろん、ガンのリスクが軽減するといっても、「将来的に絶対にガンにならない」というものではありません。しかしながら、この手術の公表は世界的に大きなインパクトを与え、「アンジェリーナ効果」と呼ばれました。この効果は著しく、日本でも予防的乳房切除手術の倫理申請を行う動きが出ています。

 

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.12  予防的乳房切除を選択したアンジェリーナ・ジョリー

 

アメリカでも、ガン対策は重要なテーマになっていますが、日本とアメリカで大きく違うところが、「ガンの予防」に対する考え方です。もちろん、ガンの予防には、緑黄色野菜を多く摂る、運動を継続する、喫煙しないなどの生活習慣改善が効果的ですが、アメリカでは「ガンの予防医療」が進んでいます。例えば、日本では予防接種の「ワクチン」以外は、病気予防のための薬の使用は原則認められていません。しかし、アメリカではすでに、「ガン予防のための薬」が認可されています。

1998年の秋、世界で初めての「ガン予防薬」が、アメリカで認可されました。乳ガンの予防に使われる「クエン酸タモキシフェン(商品名ノルバデックス)」です。女性ホルモンの分泌が多い人は、乳ガンを発症するリスクが高まることが知られていますが、この薬は女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌を抑え、ガン細胞の増殖を阻止する役割を持ちます。日本でも、クエン酸タモキシフェンは乳ガンの治療薬として使われており、「再発防止に効果あり」という疫学的なエビデンスもあります。しかしアメリカでは、これが予防薬として使用が認められているのです。このように医療の現場では、治療薬から予防薬へスタンスを変える傾向が、一部で見られるようになってきました。日本でも、乳ガンの発症率が高まってきており、こうした予防医療を推進するべきという意見が出ています。

 

(4) 抗ガン剤の誕生

(i) 世界初の抗ガン剤

1943122日、第二次世界大戦がたけなわのころです。連合国側の重要補給基地であるイタリアのバーリ港に停泊していた連合国の護送船団に、ドイツ軍は爆撃を仕掛けました。このときバーリ港には、30隻以上の連合国軍側の艦船が停泊しており、この攻撃によって、輸送船やタンカーを始めとする艦船16隻が沈没。多数の民間人と軍人が、燃え盛る炎と凍てついた海で命を落としました。その中に、アメリカ海軍リバティー型輸送船「ジョン・E・ハーヴェイ号」という船がありました。不幸なことに、この輸送船には、100 tもの糜爛性の猛毒ガスである「マスタードガス」が積まれていました。カラシに似た臭いがあるのでこの名が付きましたが、この臭気は不純物によるもので、純粋なマスタードガスは無臭の液体です。

爆撃の被害を受けたハーヴェイ号は、積み荷のマスタードガスを漏らしながら、海中へと沈んでいきました。漏れたマスタードガスが、タンカーから出た石油に混じって海中に流出したため、港内は一大惨事となりました。マスタードガスが海面を漂う石油に溶けて、溺れかかっていた連合国軍兵士たちの体に付着したのです。救助された連合国軍兵士たちは、全員がマスタードガスに被爆し、目や皮膚に異常を起こしました。気管がただれて咳き込む者、目が見えなくなった者、ペニスが異常に膨れ上がった者――彼らは症状の重い者から死に、間もなく重い感染症が蔓延して、さらに多くが死んでいきました。感染症の原因は、白血球値が激減して、免疫系が破壊されたためと見られました。マスタードガスは、白血球を作り出す骨髄細胞を破壊し、機能を失わせていたのです。結果、救助された兵士617名のうち、83名が死亡しました。

 

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.13  急襲を受けるジョン・E・ハーヴェイ号

 

そして、ここから事態は変わった方向へと進んでいきます。バーリ港での悲劇のあと、この事件の詳細は、アメリカ陸軍化学兵器部隊司令官を補佐し、その研究チームを指導していたコーネリアス・ローズに報告されました。ローズは、ニューヨーク・メモリアル病院の院長であり、全米ガン研究評議会委員長も務めていました。ローズは、この事件で見られたマスタードガスによる障害が、当時の「ガン治療」に用いられていた「X線照射」による障害と、酷似していることに気付きました。どちらも細胞核に強く作用し、「細胞分裂」を阻害する性質を持っていたのです。そして、ここであるアイディアが生まれました――マスタードガスを使えば、「白血球」と同じように細胞増殖のスピードが速い「ガン細胞」を殺せるのではないだろうか。マスタードガスが白血球の増殖を抑えるのであれば、異常な白血球が増殖する血液のガン、すなわち「白血病」や「悪性リンパ腫」の治療薬となる可能性が出てきたのです。

 

.14  マスタードガスは、カラシに似た臭いがあるのでこの名が付いたが、正確にはこの臭いは不純物によるものだ

 

そこで、当時は「X線照射療法」しかなかった悪性リンパ腫の治療が試みられました。マウスに悪性リンパ腫を移植し、そこに致死量に至らない量の「ナイトロジェンマスタード」というマスタードガスの誘導体を、静脈注射によって投与しました。すると、ナイトロジェンマスタードを投与しない試験群では、リンパ腫の増加のために、3週間でマウスは死亡してしまいました。しかし、ナイトロジェンマスタードを投与した試験群では、12週間の生存が確認されたのです。そして、ナイトロジェンマスタードによって、リンパ腫の縮小も確認されました。この結果は、医学界に大きな衝撃を与えました。当時、「外科手術」や「放射線療法」しかなかったガン治療に対し、「化学療法」が有効である可能性を示した、最初の例となったからです。

19425月には、放射線治療の効果がなくなったリンパ腫の男性に、10日間に渡って少量のナイトロジェンマスタードを投与しました。数日後、彼のリンパ腫は消滅していました。ナイトロジェンマスタードは、ガン細胞の中の核に含まれているDNAを傷付ける作用によって、ガン細胞を殺していたのです。その後、19468月には、末期ガン患者に対して、新たに開発されたナイトロジェンマスタードの誘導体が使用されました。ナイトロジェンマスタードは「NH-2」とも呼ばれていたのですが、患者に投与されたその誘導体は「NH-3」と名付けられました。こうして、マスタードガスは世界初の「抗ガン剤」として、歴史の1ページを開いた訳です。現在でも、ナイトロジェンマスタードを改良した「シクロホスファミド」や「メルファラン」などの抗ガン剤が、臨床の現場で使用されています。

 

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.15  ナイトロジェンマスタードは、ガン治療における大きなブレイクスルーとなった

 

(ii) 様々な抗ガン剤

 現在、ガン治療に使われている抗ガン剤の大部分は、「ガン細胞が急速に分裂・増殖する」という性質を逆手に取ったものです。抗ガン剤は、ガン細胞がDNAを複製するのを妨げ、それによって細胞の増殖をストップさせ、ガン細胞を死に導きます。例えば、ナイトロジェンマスタードはDNAの塩基に結合して、正常な複製を行わせないことで、ガン細胞の増殖を妨害します。また、ガン細胞に異常を引き起こさせることでアポトーシスを誘導したり、ガン細胞のDNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)に結合したりすることで、ガン細胞を殺す抗ガン剤もあります。

 盛んに増殖し、頻繁にDNA合成を行うガン細胞は、それだけ抗ガン剤によって殺傷されやすいことになります。しかし、これは正常な細胞でも盛んに分裂していれば、抗ガン剤によって傷付くということも意味します。口腔内や胃腸の粘膜、毛根の細胞、骨髄の血球を作る細胞(造血幹細胞)、精巣などは、絶えず活発に分裂・増殖を繰り返しているため、抗ガン剤によって容易に損傷します。抗ガン剤によって口や喉に炎症が生じたり、酷い嘔吐や下痢を繰り返したり、髪がすっかり抜け落ちたり、貧血を起こしたりするのは、このような理由からです。

一方で、DNAに結合して正常な複製を妨げる物質が発ガン作用を持つということは、抗ガン剤も一種の「発ガン性物質」ということにもなります。例えば、ナイトロジェンマスタードを改良した「シクロホスファミド」は、「国際がん研究機関(IARC)」の作成している発ガン物質リストの最高ランクである「グループ1」に収載されています。同じ物質が、使用量および使用対象の違いによって、発ガン物質にもなり、抗ガン剤にもなり得るのです。抗ガン剤は、少な過ぎれば効果がなく、多過ぎれば患者が耐えられない毒性を発現するので、用量については難しさがあります。

 

.1  IARCによる発ガン性物質の分類

発ガン分類

発ガン性

主な物質および環境

グループ1

発ガン性がある

アスベスト、ヒ素、ベンゼン、ベリリウム、カドミウム、六価クロム化合物、シクロホスファミド、ホルムアルデヒド、放射線照射、ピロリ菌感染、太陽光暴露、アルコール飲料、コールタール、タバコなど

グループ2A

恐らく発ガン性がある

アナボリックステロイド、シスプラチン、ジクロロメタン、ジメチル硫酸、無機鉛化合物、ナイトロジェンマスタード、紫外線、ディーゼルエンジンの排気ガス、65℃以上の熱い飲料、シフト勤務など

グループ2B

発ガン性の恐れがある

アセトアルデヒド、アクリロニトリル、四塩化炭素、クロロホルム、DDT、組織内に埋め込まれた異物、鉛、メチル水銀化合物、ナフタレン、ニトロベンゼン、ガソリンエンジンの排気ガス、ガソリンなど

グループ3

発ガン性を分類できない

アニリン、塩素消毒した飲料水、クロロメタン、塩酸、石炭粉塵、エチレン、蛍光灯、鉄鉱石、過酸化水素、水銀、フェノール、ポリエチレン、ポリスチレン、サッカリン、トルエン、コーヒー、茶など

グループ4

恐らく発ガン性はない

カプロラクタム

 

 日本で使用されている抗ガン剤は、100種類以上にもなります。大部分は、ナイトロジェンマスタード同様、頻繁に増殖する細胞に対して強い毒性を持つ物質です。ですから、そもそも大部分の抗ガン剤は、細胞毒性を持つ毒物でもあります。それらは毒ガスだけでなく、植物に含まれるアルカロイドや土壌細菌から見つかった抗生物質など、多種多様です。

 例えば、ニチニチソウという、ピンクや白の美しい花を咲かせる園芸植物があります。初夏から冬近くまで、毎日のように花が咲くので、この名が付いています。しかし、可憐な見た目とは裏腹に、この植物の仲間にはかなり強い毒があります。これは、「ビンカアルカロイド」と呼ばれる複雑な構造の化合物群が原因です。これらの化合物は、細胞が分裂する際に必要となる「チューブチン」というタンパク質に結合し、増殖を妨害するのです。この毒性を逆手に取り、ニチニチソウから得られた「ビンブラスチン」や「ビンクリスチン」などの化合物が、抗ガン剤として利用されています。日常よく見かける園芸植物の仲間から、強力な抗ガン剤が得られるというのは意外なことです。この話がどう伝わったのか、ニチニチソウの葉をすり潰して飲むことで、ガン対策になるなどという情報を、インターネットで見かけたりもします。もちろん、抗ガン剤は毒でもありますので、素人がろくに量も図らず服用するのは、大変危険なことです。止めておいた方が無難でしょう。

 

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.16  ニチニチソウから抽出されるアルカロイドは、抗ガン剤の原料となる

 

 その他、広く用いられる抗ガン剤の1つに、白金(プラチナ)を含んだ白金錯体があります。指輪などに用いられるプラチナが、抗ガン剤になるとは意外ですが、その作用は偶然に見つかりました。1965年に生物学者のバーネット・ローゼンバーグが、大腸菌に与える影響について調べていた際、ある条件で大腸菌の生育が阻害されることを発見しました。これは面白いと思って詳しく調べてみたところ、実は電場は大腸菌に何の影響も与えていないことが判明しました。電極に用いていた白金が、一部溶液に溶け出し、できた化合物が大腸菌の増殖を止めていたのが真相でした。ローゼンバーグは、大腸菌と同様に増殖速度の速いガン細胞にも白金錯体が有効なのではと考え、試したところ見事効果を示したのです。最初に見つかった化合物である「シスプラチン(商品名ランダ)」の他、さらに改良を受けた白金化合物が、現在も臨床の現場で活躍しています。

 

.17  薬理作用を示すのはシス型のシスプラチンだけで、トランス型は抗ガン作用を示さない

 

(iii) 現在の抗ガン剤治療

 抗ガン剤を用いるガン治療は、化学物質を使うことから「化学療法」とも呼ばれます。この治療は、ガンを切除する「外科手術」、および高エネルギーの放射線をガンに照射してガンを破壊する「放射線療法」と並んで、ガン治療の3本柱と呼ばれています。化学療法の進歩により、「ガン=死」という単純な図式は過去のものとなり、少なくともガンの一部は、治る可能性のある病気となっています。

例えば、乳ガンは1970年代頃まで、手術でガンを切除しても再発する患者が多く、再発によって死亡する可能性が極めて高かったのです。しかし、現在では手術の前後に化学療法を追加することによって、再発する可能性が低くなり、大部分の患者が治癒するようになりました。また、進行が速いために、かつてはほとんど助からなかった小児ガンも、今では半分以上の患者がガンを克服できるようになっています。こうした一部のガンでは、抗ガン剤が不可欠になっているのです。

 現在の抗ガン剤治療では、一般にいくつかの種類の薬を併用する「多剤併用法」が用いられます。性質の異なる抗ガン剤を併用すると、単独の薬を使う場合よりも、治療効果が向上するからです。ほとんどの抗ガン剤は、「ガン細胞の増殖を妨げる」ことによってガン細胞を殺しますが、その仕組みは様々です。各薬がそれぞれ異なるしくみでガン細胞を攻撃すれば、それだけガンに対する殺傷力が高まります。また、複数の薬を用いると、個々の薬の使用量を減らすこともできます。これによって、それぞれの薬の副作用が分散し、全体として副作用を軽くすることができるのです。

 

@ DNA2本鎖を結び付け、DNAが複製できないようにする

A DNAの複製を助ける酵素の働きを妨げる

B DNAの材料に混ざってDNAの鎖に取り込まれ、DNAの複製を止める

C 細胞が2つに分裂するときに必要な分子を壊す

 

 とはいえ、ガン細胞は悪性化(増殖速度が増し、他の組織や臓器へ転移する性質を持つこと)するため、治療を始めた当初はガンが小さくなって治癒に向かうかに見えても、そのうちに抗ガン剤が効かなくなっていくことが少なくありません。ガン細胞の多くは、損傷した自分のDNAを修復する能力や、傷を修復できないときにはアポトーシスするという細胞本来の性質を失っています。そのため、増殖してランダムな変異を重ねていく内に、増殖に有利な変異を起こしたものが生き残り、より増殖しやすく、アポトーシスしにくく、転移しやすい性質を獲得していくのです。これは、自然淘汰によって、生物が進化する現象によく似ています。ガンを「悪性新生物」ということがあるのは、このような理由からです。

 抗ガン剤によってガン細胞のほとんどが死んでも、細胞集団の中のたった1個が抗ガン剤の攻撃に耐え抜けば、それが再び増殖し始めます。ガン細胞の中には、抗ガン剤にほとんど反応しない「ガン幹細胞」というものが存在しています。抗ガン剤の多くは、メカニズムは様々ながら、「ガン細胞の増殖速度が速い」という性質に作用して分裂を食い止めるものでした。しかし、ガン幹細胞は「分裂・増殖の速度が極めて遅い」という性質を持つため、抗ガン剤がほとんど効かないのです。抗ガン剤を用いると、ガン細胞の総数は大きく減りますが、ガン幹細胞のほとんどは生き残ります。抗生物質によって寛解(ガン細胞がほぼ検出できなくなり、病状が落ち着くこと)しても、しばらく抗ガン剤の投与を止めると、ガンが再発してしまうのはこのためです。このとき生き残ったガン幹細胞が薬剤耐性を獲得すると、それまで使っていた抗ガン剤はもはや役に立ちません。

 薬剤耐性を手に入れたガン細胞と闘うことは、極めて困難です。それまでとは異なるしくみで働く薬を使うか、あるいは重い副作用を覚悟してより強力な抗ガン剤を大量に投与するしかありません。しかし、大量の抗ガン剤を投与すれば、正常な細胞も大量に傷付きます。とりわけ、このような強力な抗ガン剤治療を行うと、骨髄の中の造血幹細胞が死に絶え、白血球や赤血球などの血球が作られなくなるため、治療後には骨髄移植(造血幹細胞移植)を行う必要が生じます。現在では、抗ガン剤の副作用を抑える様々な薬が開発されており、ガンの種類によっては、通院で治療を受けることも可能になっています。しかし、ときには重い腎臓障害や心臓障害、免疫低下による感染症などが生じ、たとえ回復しても深刻な後遺症が残ることもあります。

 

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.18  薬剤耐性を獲得するガン細胞

 

(5) 分子標的薬とは?

抗ガン剤の副作用を軽くする方法はないのでしょうか?細菌だけを殺す抗生物質のように、「ガン細胞だけを殺す薬」というものがあれば、副作用はほとんどないとも考えられます。しかし、ガンはウイルスや細菌のように、外部から体内に侵入して来た「外敵」ではありません。体を構成する自分の細胞が変化して生じた「内なる敵」です。そのため、正常な細胞とガン細胞との違いは小さく、外敵には敏感に反応して体を防御する免疫システムでさえ、多くの場合、ガン細胞を見逃してしまいます。ガン細胞だけに狙いを定めることは、至難の業といえます。19世紀から20世紀にかけて活躍したドイツの薬理学者パウル・エールリヒは、何とか患部だけを治療できないかと考え、そのアイディアを「魔法の弾丸」と呼びましたが、当時は実現しませんでした。しかし今、「ガン細胞のみを攻撃する薬」が開発されています。狙いを外すことのない「魔法の弾丸」のようなその薬は、「分子標的薬」と呼ばれます。

「分子標的薬」とは、ガン細胞に見られる特徴的な分子を標的にして結合し、その働きを妨げることで、ガンの成長を止めたり破壊したりする薬のことです。従来の抗ガン剤が細胞傷害を狙うのに対し、分子標的薬の多くは細胞増殖に関わる分子を阻害するという違いがあります。分子標的薬を用いることによって、免疫細胞がガン細胞を攻撃するための目印となったり、この分子が増殖を促す信号(別の分子)を受け取るのを妨げたりします。

 

.19  従来の抗ガン剤と分子標的薬

 

例えば、乳ガンに使用される「トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)」は、ガン細胞の表面にある「HER2」というタンパク質に結合します。HER2は細胞表面に存在する受容体のことで、正常な細胞でも機能していますが、多くの種類のガン細胞で異常増幅していることが分かっています。そして、このHER2陽性腫瘍の患者では、ガン細胞の増殖や転移が速く、致死率も高かったのです。ハーセプチンは、このHER2に強く結合することで、ガンの悪化を防いでいます。ハーセプチンの登場によって、再発や転移を起こす患者が減り、長期生存率も上昇しました。アメリカで行われた試験では、従来の抗ガン剤のみを用いた乳ガン患者の奏効率は26.3%であったのに対し、従来の抗ガン剤に加えてハーセプチンを併用した患者の奏効率は65.2%に跳ね上がったといいます。ハーセプチンの登場以来、乳房温存療法が可能なケースが大幅に増え、再発も減ったといわれています。

 大腸ガンや肺ガン、乳ガンなど多くのガンに対して用いられる「ベバシズマブ(商品名アバスチン)」のように、血管が新しく作られる「血管新生作用」を抑える薬もあります。ガン細胞は急速に成長するために、大量の栄養や酸素を必要とします。そこで、ガン細胞の多くは、「血管内皮細胞増殖因子」という特殊な分子を近くの血管に向けて放出し、新しい毛細血管がガン細胞の近くまで伸びてくるように仕向けます。アバスチンは、血管内皮細胞増殖因子に結合してその働きを封じ、血管新生を妨げます。血管が伸びてこなければ、ガン細胞は酸素や栄養の補給を絶たれて、餓死することになります。いわば、ガン細胞に対して「兵糧攻め」を行う訳です。健康な器官では、血管が新しく作られることはほとんどありませんので、副作用も少ないと考えられます。アバスチンは、2014年には日本国内だけで売り上げが1,000億円を突破し、全医薬中2位というベストセラーになりました。

 

.20  アバスチンは、血管新生を抑える作用を持つ

 

 分子標的薬は、ガン細胞のみを攻撃対象とするため、治療効果が高く、副作用は少ないと考えられていました。しかし、現実は必ずしも期待通りではありません。例えば、2002年に非小細胞肺ガンの治療薬として認可された「ゲフィチニブ(商品名イレッサ)」は、マスコミに「夢の抗ガン剤」と報道されて迎えられましたが、副作用として「間質性肺炎」と呼ばれる重い肺炎を発症するケースが続出しました。2016年までに、間質性肺炎による死者は、800人以上に上っています。薬害問題として大きく報道されたので、記憶にある方も多いことでしょう。これによって、マスコミは一斉にバッシングに転じ、イレッサは市場撤退寸前まで追い詰められましたが、イレッサの副作用発生率は従来の抗ガン剤とほぼ同等で、生存期間や腫瘍縮小効果などで勝ることが示されています。患者によっては著効を示すケースも少なくなく、現在の臨床の現場においては、重要な抗ガン剤の1つとして定着しています。

 

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.21  薬害イレッサとして訴訟が起こったが、2013年に原告の全面敗訴という形で決着が付いた

 

 こうした重大な副作用が生じる1つの原因は、ガン細胞には薬の標的になる分子が多いものの、それらは必ずしもガン細胞に特有ではなく、正常な細胞にも多少なりとも存在するためと考えられています。また、薬が体内で別の物質に変わったり、想定外の反応を起こしたりする可能性もあります。分子標的薬は、イレッサのように思いがけない重い副作用を引き起こすことが少なくありません。例えば、先述した大腸ガンに用いられる「アバスチン」は酷い出血を起こすことがありますし、膵臓ガンに用いられる「エルロチニブ(商品名タルセバ)」は重い心臓の異常を生じさせることがあります。

しかも、こうした分子標的薬の多くでは、ガンが消滅するような高い効果を見せる患者もいるものの、効果は概ね一次的で、それによって患者が延命できる期間も23カ月に過ぎません。例外的に、慢性骨髄性白血病に用いられる「イマチニブ(商品英グリベック)」のように、90%以上の患者に高い効果を示す薬もあります。グリベックは、ガン発症の原因となる遺伝子の作用を直接妨げることから、治療効果が高いと見られています。白血病のうちごく一部のみに効果を示すだけとはいえ、今までの抗ガン剤につきものであった脱毛や吐き気などの副作用も軽微なものに留まるなど、「奇跡の薬」と呼ばれています。このような例を除いて、科学者はガン細胞を特異的に標的とする仕組みを、未だに見出すことができないでいます。

 ガンの種類は極めて多様で、それぞれ異なる遺伝子の異常によって発症します。同じ乳ガンや肺ガンといっても、遺伝子レベルで見れば、患者ごとに別々の病気といっていいくらい違いがあるのです。ガンの原因となる遺伝子が1つの場合は、薬の標的も定めやすく、治療も容易です。しかし、大抵のガンは、複数の遺伝子の変異が積み重なることによって発症します。このようなガンに対しては、治療効果の高い分子標的薬はまだ作られておらず、従来の細胞毒を持つ抗ガン剤しか選択肢がないのが現状です。また、分子標的薬の多くは、バイオ技術によって生産される「抗体医薬」と呼ばれるタイプの薬であり、化学合成による従来の医薬よりも、製造費がかさみます。さらに、有効な患者数が少ないため、臨床試験の期間は長引き、結果として1人当たりの薬価は極めて高くなる傾向にあります。高額医療制度によって、一定額を超えた医療費は国から支給されることになっていますが、これが医療費を高騰させ、国民の負担になっていることも問題です。

 

(6) ガン免疫療法とは?

 私たちの体の中で、ガン細胞は1日に5,000個も生じていることは先にも述べました。これらのガン細胞の多くは、通常は免疫系の働きで完全に排除されています。しかし、一度この免疫系の攻撃をかいくぐるガン細胞が現れると、止めどもなく増殖していき、手が付けられなくなります。そのため、「免疫系を活性化してガン細胞と闘ってもらう」というアプローチは、昔から考えられてきました。しかし、免疫系に作用する医薬を開発するには、多くの研究上の問題がありました。1つには、試験管内での試験が難しいことがあります。また、人間の免疫系と仕組みが大きく違うため、動物実験で信頼のおける結果が出しにくいことなども障害になります。このため、ガンの「免疫療法薬」と呼ばれるものは、ごく一部のガンに対する効果の弱い薬に留まり、ガン治療を大きく変えるには至っていませんでした。しかし、最近になって「免疫チェックポイント阻害剤」というものが登場してきたことにより、「ガン免疫療法」は大きく前進することになりました。

 免疫系は異物を認識すると、「殺し屋」とも呼ばれるキラーT細胞を送り込み、これを破壊してしまいます。このキラーT細胞によって、ウイルスに感染した異常な細胞などは正常に排除されています。細胞がガン化したときも同様で、通常はキラーT細胞によって排除されています。しかし、この免疫作用が過剰に働いてしまう場合があります。すると、私たちの体自身が免疫系に攻撃されることになり、いわゆる「自己免疫疾患」を発症してしまいます。このような免疫の自己に対する暴走を防ぐため、免疫系には攻撃のブレーキがかかる仕組み(免疫チェックポイント)が用意されています。

 

.22  腫瘍細胞に襲いかかるキラーT細胞

 

ガン細胞は、この攻撃のブレーキ(免疫チェックポイント)を悪用します。具体的には、ガン細胞は「PD-L1」というブレーキ役の分子を表面に持っており、これがキラーT細胞表面にある「PD-1」という受容体に結合してしまいます。こうなると、キラーT細胞の免疫反応にブレーキがかかって攻撃ができなくなり、ガン細胞は生き延びてしまうのです。そこで、このPD-1に結合する分子(免疫チェックポイント阻害剤)を送り込む手段が考えられました。ガン細胞より先にPD-1に結合させれば、ガン細胞のPD-L1PD-1に結合できなくなります。すると、ガン細胞に対するキラーT細胞の免疫系にブレーキがかからず、ガン細胞を攻撃できるようになります。生体の持つ免疫機能を利用して、ガンを治療しようというやり方なので、副作用などは最小限で済むところが大きな特徴です。

 

.23  ガン細胞が免疫系の攻撃から逃れる仕組み

 

このPD-1というブレーキ役の分子は、京都大学名誉教授の本庶佑の研究チームが1992年に発見したものです。本庶は、小野薬品と共に抗PD-1薬の開発に乗り出しますが、当時は著効を示すガン免疫療法薬がほとんど存在せず、ガン免疫療法は「まゆつばもの」というレッテルを貼られ、日本ではどの企業も小野薬品と共同開発を行いませんでした。しかたなく本庶と小野薬品は、海外の米国バイオベンチャー企業であるメダレックスと手を組み、ようやく2006年になって初めての抗PD-1薬が、アメリカ食品医薬品局FDAにより研究用新薬として承認されました。

初めての臨床試験の結果は、予想をはるかに上回るものであり、この結果が2012年にアメリカの臨床医学雑誌「New England Journal of Medicine」に掲載されると、世界中の製薬会社が抗PD-1薬の研究を始めました。さらに2013年には、「サイエンス」誌の選ぶ「ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。科学分野全体における年間最大のブレイクスルーに選ばれたのですから、その評価の高さが分かります。そして2018年には、「免疫チェックポイント阻害因子の発見とガン治療への応用」の業績により、ノーベル生理学・医学賞が授与されました。

 

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.24  2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑

 

 このような「免疫チェックポイント阻害剤」は、従来のガン治療戦略とは異なる画期的な治療として、臨床医学に応用されるようになりました。なお、「免疫チェックポイント」というのは、免疫抑制機能を持つPD-1のことです。初めての免疫チェックポイント阻害剤は、「ニボルマブ(商品名オプジーボ)」の名で、日本では2014年に医薬として認可を受けました。当初は、皮膚ガンの一種である悪性黒色腫の治療薬としてのみでしたが、そのあとに非小細胞肺ガン、腎細胞ガンなどへの使用も認可され、胃ガンや食道ガンなどへの試験も進行中です。悪性黒色腫は、進行すると5年後生存率が1割程度という危険性の高いガンですが、オプジーボの投与によって、ガン細胞がほとんど消滅する患者も出ています。肺ガンの臨床試験では、他の薬剤と比べて圧倒的に優れていることがあまりに明確になったので、これ以上の試験はオプジーボ以外の対照薬を投与されている患者に不利になるとして、試験が途中で中止されるという異例の事態となりました。

 

.25  オプジーボは、20149月に小野薬品工業より発売が開始された

 

 このような次第で、免疫チェックポイント阻害剤を用いる「ガン免疫療法」は、「化学療法」・「外科手術」・「放射線療法」というそれまでのガン治療法に続く「第4のガン治療」とも呼ばれるようになりました。免疫チェックポイント阻害剤は、理論上あらゆるガンに対して効果が現れる可能性があり、現在様々なガン対する効果が検証されているところです。とはいったものの、オプジーボは効く患者がかなり限られており、肺ガンの患者で効果が見られたのは、約2割に留まりました。なぜ効かない患者がいるのかはよく分かっておらず、効く患者と効かない患者を正確に見分けるバイオマーカーも存在していません。マスコミなどでは、「夢の抗ガン剤」としてオプジーボをもてはやす動きもありますが、現時点でオプジーボは、決してすべての患者を救う「夢の薬」などではありません。

また、オプジーボは「超高額な薬価」という大きな問題も抱えています。2014年では、オプジーボの薬価は100 mg729,849円に達し、1年間使用すると3,500万円にもなりました。この価格は、高価といわれた従来の抗ガン剤と比べても高く、財政の大きな負担になるという指摘がなされていました。その後、オプジーボの薬価は引き下げられ、2018年には100 mg278,029円となりました。しかし、これでも1年間使用すると1,300万円にもなり、かなりの高額になることには変わりません。

 

(7) ガンの臭いでガン診断

病気には、「特有の臭い」があることが、昔から知られています。例えば、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンは、ヨーロッパで流行したペストについて、「腐った柔らかいリンゴのような臭いだ」と書き残しています。その他にも、現場の医療従事者からは、様々な報告が上がっています。例えば、ガンは「ホルマリン固定された肉の臭い」、リュウマチは「独特の酸っぱい臭い」、糖尿病は「甘酸っぱい臭い」、重度の鬱病は「埃っぽい臭い」、貧血は「アンモニア臭」がするといいます。

そもそも、ヒトは病気になると、体内で特異的な代謝が起こるようになり、健康時には生じないような揮発性物質(アルカン、アルデヒド、カルボン酸、芳香族化合物など)が生成することがあります。これが体循環によって全身を回り、汗や吐息などに混じって、特有の臭いとなるのでしょう。血液検査やレントゲン検査といった客観的な検査法がなかった時代、臭いは病気を見極める重要な判断材料でした。患者の体臭を嗅いで病気を診断する「嗅診」は、日本でも明治時代までは当たり前のように行われていたといいます。

 

.2  病気による体臭の変化

病名

体臭の特徴

ガン

ホルマリン固定された肉の臭い

リュウマチ

独特の酸っぱい臭い

糖尿病

甘い臭い、甘酸っぱい臭い

痛風

古いビールの臭い

重度の鬱病

埃っぽい臭い

歯周病

ゴミが腐った臭い

慢性副鼻腔炎

ゴミが腐った臭い

ペスト

青リンゴの腐った臭い

メープルシロップ尿症

メープルシロップの臭い

トリメチルアミン尿症

魚が腐った臭い

フェニルケトン尿症

カビの臭い

胃の障害

酸っぱい臭い、卵の腐った臭い

肝機能の障害

ネズミ臭、ドブのような臭い

貧血

アンモニア臭

ひどい便秘

便の臭い

 

ガンの臭いについては、昔から「手術で患部を開けると特有の臭いがする」と外科医が報告していたようです。「ガン患者が多い病棟に行くと特殊な臭いがする」と話す医師もいました。ガンを臭いで検出したという最初の報告は、1989年に皮膚科の医師からされたものです。足にあざができた女性に犬がやたら執着するため、同部位を皮膚生検したところ、悪性黒色腫だったというのです。犬は人の10万倍以上の嗅覚受容体を持つことから、尿や便の臭いを嗅ぐことで、ガンがあるかどうかを高確率に嗅ぎ分けられる「ガン探知犬」を、ガン診断に活用しようという試みがあります。

2004年にイギリスの医学雑誌「BMJ」に掲載された論文は、144名の尿検体を用いた大規模な研究です。6匹の犬に7カ月の訓練期間を設けて、膀胱ガンの患者の尿を嗅ぎ分けられるようにしつけました。その後、膀胱ガンの患者の尿と、健常な人の尿を嗅ぎ分けられるかどうか実験を行いました。実験方法は、1つの膀胱ガンの患者の尿と6つの非膀胱ガンの患者の尿をランダムに並べた7つの検体に対して、イヌが膀胱ガンの患者の尿のみを嗅ぎ分けられるかというものです。結果、54回のテストのうち、22回で犬は膀胱ガンの患者の尿を嗅ぎ当てました(41%の確率)。単純に考えれば、偶然成功する確率は7分の114%の確率)ですから、これは優位に高い結果と結論付けられました。膀胱ガンだけでなく、同じ泌尿器系のガンである前立腺ガンについても、臭いで嗅ぎ分けられる可能性が示唆されています。

2011年にイギリスの医学雑誌「Gut」に掲載された論文では、さらに高精度で大腸ガンを診断できるガン探知犬の研究が紹介されています。患者から採取した呼気と便の検体を用いて、大腸ガンと判明している患者1検体と非ガン患者4検体を1セットとして、別々の箱に入ったこれら5検体から1つだけ正解を見つけるように実験しました。この結果、ガン探知犬は大腸ガンを呼気では36セット中33セット(91.6%の確率)、便では38セット中37セット(97.3%の確率)という精度で、正解を嗅ぎ分けることに成功しました。これは驚くべき確率だと思います。

 

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.26  日本では、千葉県にある「がん探知犬育成センター」でガン探知犬の普及を行っている

 

また、九州大学の廣津崇亮らの研究グループは、「C・エレガンス」という線虫によって、ガンの有無を高い精度で検診する方法を研究しています。このC・エレガンスという線虫は、体が透明で観察しやすく、飼育もしやすいことなどから、生物学者にモデル動物として、広く愛用されています。多細胞生物として、初めて全ゲノム配列が解読された生物でもあります。

廣津は、線虫の嗅覚を長年研究しており、線虫がガンの臭いに対して、「正の走性」があることを発見したのです。線虫は、体長わずか1 mmほどの生物ながら、イヌの1.5倍の嗅覚受容体を持ちます。線虫には、好きな臭いに寄って行き、嫌いな臭いから逃げるという走性行動があり、反応を容易に調べられるのです。検診の方法は極めてシンプルで、シャーレに患者の尿を1滴垂らし、線虫がどのように反応するかを観察するだけです。尿を垂らしてから数十分経って、線虫が尿に集まっていれば「ガンの疑いが高い」、線虫が遠ざかれば「ガンの疑いが低い」というようになります。この検診では、ガンの種類までは特定できないものの、コストはわずか数百円程度であり、95.8%という極めて高い感度で診断できるといいます。この診断システムは、早期発見の難しい膵臓ガンを含む様々なガンを発見できるため、ガン診断にかかる時間やコストを大幅に削減できると考えられています。

 

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非常に高い精度で生成された説明

.27  C・エレガンスは、ガンの臭いを好み、ガンの臭いに対して正の走性がある


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・参考文献

1) 石浦章一「タンパク質はすごい!〜心と体の健康をつくるタンパク質の秘密」技術評論社(2014年発行)

2) NHKスペシャル「人体」取材班「シリーズ人体 遺伝子 健康寿命、容姿、才能まで秘密を解明!」講談社(2019年発行)

3) 倉原優「本当にあった医学論文」中外医学社(2014年発行)

4) 佐藤健太郎「医薬品とノーベル賞 がん治療薬は受賞できるのか?」株式会社KADOKAWA(2016年発)

5) 佐藤健太郎『化学で「透明人間」になれますか?』光文社(2014年発)

6) 佐藤健太郎『「ゼロリスク社会」の罠』光文社(2012年発)

7) 左巻健男「ニセ科学を見抜くセンス」新日本出版社(2015年発)

8) 田中越郎「好きになる生理学」講談社(2003年発行)

9) 萩原清文「好きになる分子生物学」講談社(2002年発)

10) 萩原清文「好きになる免疫学」講談社(2001年発)

11) 早川欽哉「好きになる病理学」講談社(2004年発)

12) 矢沢サイエンスオフィス編「確率と統計がよくわかる本」学研プラス(2017年発行)

13) 矢沢サイエンスオフィス編「薬は体に何をするか-「あの薬」が効くしくみ-」技術評論社(2006年発行)